独立行政法人産業技術総合研究所
現在位置広報活動 > 出版物 > 産総研 TODAY Vol.10(2010) 一覧 > Vol.10 No.09 > カーボンナノチューブを高純度に分離

カーボンナノチューブを高純度に分離

[ PDF:1.3MB
繰り返し連続自動分離が可能で簡便かつ低コストを実現

片浦 弘道の写真片浦 弘道 かたうら ひろみち
片浦連絡先
ナノシステム研究部門
自己組織エレクトロニクスグループ 研究グループ長
(つくばセンター)

カーボンナノチューブの実用化を目指した研究を行っています。今回開発したナノチューブの分離法はこれまでの集大成、まさに究極の分離法です。寒天とナノチューブの不思議な相互作用を活用すると、安価に高性能塗布型半導体デバイス材料が得られます。この新技術で、つくば発の新素材、単層カーボンナノチューブの産業応用を目指しています。

単層カーボンナノチューブの性質

 単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は炭素原子の並び方によって、金属的な性質のもの(金属型)と半導体的な性質のもの(半導体型)が存在します。この二つの型を高純度に分離できれば、金属型SWCNTでは、液晶ディスプレーや太陽電池パネル用の透明電極への利用が期待できます。また、半導体型SWCNTでは、透明で折り曲げることができるフレキシブルトランジスターなどへの利用が見込まれます。

 現状では、これらの性質の異なるSWCNTを選択的に合成する手法がないため、混合物からそれぞれのSWCNTを分離することが試みられています。しかし、これまでの金属型・半導体型の分離法は、いずれも回収率や純度、コストなどに問題があり、大量に分離精製する段階には至っておらず、高純度で安価、そして大量処理が可能な分離技術の開発が望まれていました。

開発した分離技術

 産総研が以前に開発したアガロースゲルを用いた金属型・半導体型SWCNTの分離方法では、ゲルに吸着した半導体型SWCNTを分離回収するには、ゲルを溶かして取り出す必要がありました。今回、この課題を解決するため、カラムクロマトグラフィーの手法を応用しました(図)。アガロースゲルのビーズを充填(てん)したカラムにSWCNTの分散液を添加した後、分離液を流すと、半導体型のSWCNTがゲルに吸着する一方、金属型のSWCNTはカラムを通り抜け分離回収されます。カラムに残っている金属型SWCNTを十分に洗い流した後、適切な界面活性剤を含む溶出液をカラムに流すと、吸着していた半導体型SWCNTを脱離・溶出させて回収できました。アガロースゲル充填カラムは平衡化を行えば再生されるので、再度の分離が可能となり、しかも繰り返し使用しても分離純度は低下しませんでした。これまでのSWCNT含有ゲルを用いて電気泳動や遠心分離で分離した試料と比べても、分離したSWCNTの純度が向上しており、半導体型SWCNTで95 %、金属型SWCNTで90 %となりました。

図
図 カラムを用いたSWCNTの金属型・半導体型分離の概略図

今後の展開

 今後は、分散液調製の効率化・低コスト化が重要になってくるため、SWCNT分散液調製に関する研究も進めます。また、企業などと協力して、金属型SWCNTと半導体型SWCNTの大量分離に向けた研究を推進するとともに、分離したSWCNTの用途開発を行っていく予定です。


関連情報:

戻る産総研 TODAY Vol.10 No.09に戻る