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汎用マグネシウム合金の新圧延技術の開発

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常温でプレス加工できる広幅圧延材のサンプル供給を開始

千野 靖正と黄 新ショウの写真 千野 靖正 ちの やすまさ(右)
千野連絡先
サステナブルマテリアル研究部門
金属系構造材料設計研究グループ
研究グループ長
(中部センター)
マグネシウム合金鋳造材は家電製品筐体や自動車部材として需要が伸びています。一方、展伸材の需要は伸び悩んでいます。当グループでは、組織制御によりマグネシウム合金展伸材の特性を改善するための研究を行っており、高張力鋼に匹敵する魅力的なマグネシウム合金を開発することを夢見て研究に取り組んでいます。
黄 新ショウ Huang Xinsheng
こう しんしょう(左)
黄連絡先
(所属は同上) 研究員
(中部センター)
2005年に産総研に入所して以来、組織制御をツールとして軽量金属材料を高機能化するための研究に従事してきました。現在は、輸送機器軽量化に資する高性能マグネシウム合金圧延材を創製するための研究開発に取り組んでいます。

図1
図1 マグネシウムの結晶異方性(左)と圧延集合組織の形成(右)

マグネシウム合金利用の現状

 優れた比強度特性を有するマグネシウム合金は次世代自動車の軽量構造材料として注目を集め、現在、鋳造部品を中心に利用が拡大しています。プレス加工で部品を成形するために用いられるマグネシウム合金圧延材は、鋳造では作製が難しい薄型大型部材を大量生産するための素材として、その実用化が期待されています。

 一方、マグネシウムは六方最密構造であり、その異方性のため常温ではc軸方向に変形することができません。また、マグネシウム合金を圧延すると、特定の方位に結晶が揃った集合組織が形成されるため、圧延材の異方性はさらに高くなってしまいます(図1)。そのため、マグネシウム合金圧延材の常温成形性は、アルミニウムや鉄鋼よりも著しく低く、常温プレス成形が難しいことが問題となっていました。

 最近、産総研では京都大学との共同研究により、微量の希土類元素を添加したマグネシウム−亜鉛系合金を熱間圧延すると、集合組織の形成が著しく少なくなり、優れた常温成形性が発現することを発見しました。しかし、この合金の組成は汎用マグネシウム合金(AZ31合金)と大きく異なるため、汎用マグネシウム合金用に開発された既存技術(表面処理技術)を流用することが難しく、実用化に際しての課題となっていました。


開発した圧延技術

 そこで、合金の組成を変えずに、圧延プロセスを高度に制御することにより、“汎用マグネシウム合金”の常温成形性を改善することを目標として研究開発を行った結果、これまでの圧延プロセス(圧延温度:400 ℃以下)よりも約100 ℃高い温度で圧延を実施すると、常温成形性を阻害する集合組織の形成が抑制され、アルミニウム合金(5083合金相当:エリクセン値8.5)並みの優れた成形性(エリクセン値8.0)が得られることを発見しました(図2)。これまでは、強度改善・発火防止の観点から、マグネシウムの圧延は極力低温で行うことが固定観念となっていました。私たちは、固定観念とは逆の発想により、マグネシウム合金圧延材の集合組織の形成を抑制することに成功しました。この圧延技術は、既存の圧延設備をそのまま流用でき、さらに、既存の表面処理技術を直接利用できるため、実用化に向けた技術障壁がきわめて低いのが特徴です。

図2
図2 AZ31合金圧延材のエリクセン試験結果

今後の展開

 現在、日立金属株式会社において新圧延技術によるAZ31合金圧延材のサンプル供給が始まっています(図3)。この圧延材が本格的に市場に投入されれば、マグネシウム合金プレス加工の適用範囲が拡大することが期待されます。

図3
図3 新圧延技術により作製したAZ31合金圧延材の外観(幅300 mm、 厚み0.6 mm)

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