沿岸域の地質情報空白域
日本列島のように山地の多い国土では、海に面した平野部に人口が集中し、都市が発展してきました。一方で、平野部は軟弱な地層からなることが多いため、地震が発生すると地震動が増幅され、被害が大きくなります。地震災害を少しでも小さくするためには、平野部とその周辺で活断層の位置や地盤構造を明らかにし、将来発生する地震と地震動を予測することが必要です。しかし、今まで十分に調べられていたとは言えません。特に海岸から水深数十mまでの海域は、地質情報の空白域と言える状況でした。例えば2007年の能登半島地震と中越沖地震は沿岸海域の地質情報空白域で発生しましたが、これらの地震の原因となった海底の活断層の危険性は十分に認識されていませんでした。
音波探査手法の改良
このような社会的に重要な場所で十分な地質調査が行われていなかったのは、調査が困難だったからです。海底の地質は音波探査によって調べますが、やや大型の調査船に搭載する強力な探査システムでは、漁業活動が活発で漁具が多い沿岸海域では危険が多く、探査が困難でした。小型船に搭載できる小型の調査機器での沿岸海域調査はできますが、既存の機器では質の高いデータが得られませんでした。そこで、小型船に搭載でき、質の高いデータが得られる小型マルチチャンネル音波探査装置を開発し、水深の浅い沿岸海域でも質の高い音波探査データが得られるようになりました。2007年の能登半島地震や中越沖地震を発生させた活断層も、この音波探査装置によって明瞭(めいりょう)にとらえられました。
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能登半島北部の海陸シームレス地質図
これまでの地質図では、海岸線に沿って情報の空白域があったが、この図では能登半島北岸で海陸の連続的な地質分布が表現されている。 |
海陸シームレス地質情報集
新しい音波探査装置の開発によって、地質情報の空白域である沿岸海域を調査できる条件が整いました。まず、能登半島北部の沿岸海域で音波探査を実施し、陸域の地質情報も用いて、陸域から海域まで連続した空白域のないシームレス地質図を作成でき、今まで知られていなかった連続的な活断層が海岸線に沿った浅海域に分布することが明らかになりました。それ以外にも、重力探査、反射探査データの再処理などを実施し、それらの情報を収集した能登半島北岸域のシームレス地質情報集を出版しました。このような海陸シームレスな地質情報は、地震災害だけでなく、地下水の利用と汚染、海岸浸食などへの対策のための基本情報として、今後必要とされる機会が増えていくと考えられます。 |