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シリーズ:進化し続ける産総研のコーディネーション活動(第8回)
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バイオマス技術を核とした本格研究の実践〜「オープン・イノベーション・ハブ」の具現者として〜


産学官連携コーディネータ 小田 喜一(おだ きいち)

小田 喜一の写真
連携企業とプロジェクトの打ち合わせ(右列中央が筆者)

産学官連携コーディネータへの道

 産総研の前身の工業技術院では、構造用セラミックスの成形、焼結、特性評価など材料に関する研究を行ってきました。2001年に産総研が発足した後は10月より企画本部で材料戦略室長として材料分野の戦略策定を統括し、2004年1月に中部センターの産学官連携コーディネータに就任しました。コーディネータとしては、2006年に「地域新生コンソーシアム」を立ち上げ、2007年には、業界、協会、経済産業省などとの協力により“粉末冶金”が「中小ものづくり高度化法」の“特定ものづくり基盤技術”の指定を受けることができました。

地域連携は県から

 2007年4月に、岡山県工業技術センターに所長として赴任しました。岡山県は精密生産技術を中心としたものづくり技術の高度化や、地域の未利用資源を活用する新たなバイオマス産業の創出などを、産業施策として重点的に進めていました。

 そうした折、愛知県の企業の方が工業技術センターを訪ねて来られ、「資源循環型社会の構築のため、自動車産業においても資源の循環は必要であり、バイオマスの材料利用技術の開発を行ってはどうか」とのことでした。この提案を受け、早速2008年6月に私自身を会長として「セルロース系バイオマス超微粉砕技術研究会」を設立し、セミナーを開催(4回/年)しながら、大型プロジェクトの企画立案を行いました。この研究会の設立に当たっては、産総研バイオマス研究センターが研究面での大きな支えでした。

 さらなる展開を目指して「低炭素社会に向けた技術シーズ発掘・社会システム実証モデル事業(経済産業省)」に応募したところ、2009年2月にプロジェクトが採択され、1.1億円の事業費を獲得いたしました。補正予算のため1年間限りの事業でしたが、µmレベルの微粉砕装置や風力・太陽光発電や蓄電システムを統合するための制御システムの試作、微粉砕試料の評価、分散処理に関する基礎的知見など、想定以上の研究成果を得ました。

気づいてみれば「オープン・イノベーション・ハブ」

 2009年4月からは、中国センターで産学官連携コーディネータとして再活動しています。一方、岡山県は前述プロジェクトの研究成果と研究会組織を基に、次期大型プロジェクト「森と人が共生するSMART工場モデル実証」(提案予算額;9.2億円、期間;5年間)を提案し、2010年6月に「気候変動に対応した新たな社会の創出に向けた社会システムの改革プログラム(文部科学省)」に採択されました。このプロジェクトでは、これまで搬出コストなどの問題でほとんど利用されていない林地残材などを、付加価値の高い工業用材料として本格的に利用するための技術開発を行います。また、太陽光や風力、バイオマスなど、地域の特性に応じたクリーンなエネルギーを利用することで、製造過程でのCO2排出を抑制します。技術開発は、経済性や環境、社会への影響評価を行いながら進め、全国に普及可能な林工一体型「SMART工場」モデルを構築して森林・林業を再生し、豊かな緑環境に恵まれた「森と人が共生する社会」への変革を図るというものです。

 このように、コーディネータ活動により、産学官が結集して、産総研の「人」と「場」を活用する連携を築くことができました。まさに、「オープン・イノベーション・ハブ」として機能できたと考えています。

今後に向けて

 上記プロジェクトでは、「セルロースナノファイバー」の低コスト・大量生産技術の開発が鍵となります。プロジェクトが終了する5年後には、製品開発にまでこぎ着け、「本格研究」を成就したいと考えています。

図
林工一体型「SMART工場」構想

このページの記事に関する問い合わせ:産学官連携推進部門 http://unit.aist.go.jp/collab-pro/ci/coordinator/contact/tsukuba.html

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