民間企業、ポスドクを経て、2000年旧電子技術総合研究所に入所。以来一貫してSiCを用いたインバーターなどで用いられるパワーデバイスの低損失化の研究開発に従事してきました。SiCパワーデバイスの実用化も今一歩のところまできており、早期に省エネルギーに貢献したいと考えております。 |
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福田 憲司(ふくだ けんじ) |
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本格研究 理念から実践へ
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パワーエレクトロニクス技術の革新に向けた本格研究
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省エネ用SiCパワーデバイスの早期実用化を目指して |
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超低損失SiCパワーデバイスの必要性発電所から送られる電力は電気機器内で電力変換器により交流から直流に変換され、さらに電圧を変えて使用されます(図1)。この電力変換器は、これまでケイ素(Si)パワーデバイスで構成され、その性能向上とともに変換効率も増して省エネ化が促進されてきましたが、最近では、Siパワーデバイス技術の進歩が飽和してきています。
そこで注目されているのが、Siよりもエネルギーギャップが約3倍で絶縁破壊電界が約1桁大きい炭化ケイ素(SiC)です。図2にSiとSiCのパワーMOSFET(電界効果トランジスタの一種)の比較を示します。SiCの場合にはドリフト層のキャリア濃度を2桁濃くして厚さを1/10にでき、理論的には通電状態の抵抗(オン抵抗)が1/200になると試算されています。日本を始めとして欧米でも開発が進んでいますが、未だに整流素子として用いるショットキーバリアダイオード(SBD)が市販されるに留まっています。SiCパワーデバイスの普及による省エネ化の促進にはMOSFETの早期実用化が急務です。
C面上における超低損失SiCーIEMOSFETの開発SiC−MOSFETの超低オン抵抗を実現するにはチャネル移動度を向上することが必要であり、そのために二つの観点から開発を行いました。まず、これまでのSiCデバイスではMOS界面はSi面と呼ばれる面方位に形成されていましたが、私たちはC面という面方位に着目して、ゲート酸化膜の形成法を研究し、ウエット酸化と高温水素アニールを組み合わせることにより、Si面の約2倍のチャネル移動度を得ることに成功しました。また、Pウエルを2層構造にしました。パワーMOSFETにおいてチャネルが形成されるPウエルの底部をイオン注入(Implantation)で形成して上部はエピタキシャル層(Epitaxial layer)で形成することによりSiCの表面を平滑にしてチャネル移動度を向上させ、耐圧600 V級で1.8 mΩcm2を達成しました(図3)。この値は、当時としては世界最高値でした。私たちは、このMOSFETを、Pウエルの形成法の頭文字をとってIE−MOSFETと名付けて、デバイス関係の学会として世界最高の国際会議であるIEDMで発表し、注目を集めました[1]。
死の谷の克服IE−MOSFETは、小面積では世界最高値を達成して応用側から供給して欲しいとの希望も多数ありましたが、パワーデバイスとして使用するには数十Aの電流が必要であり、20 mm2程度のチップを量産することが必要です。それに対して、産総研の研究用のラインでは、3 mm2程度のチップを作製するのがやっとであり、SiCパワーデバイスの実用化にあたって、まさに死の谷に突入してしまいました。 そこで、産総研産業変革イニシアティブ「SiCデバイス量産試作研究およびシステム応用実証」で、富士電機ホールディング株式会社と大容量SiCデバイスの量産技術についての共同研究を行うことになりました。共同研究は、2011年度まで実施され、数十A級のSBDとMOSFETの量産技術を、応用側のSiCパワーデバイスの電気特性の評価結果をフィードバックして確立すると同時に、応用側へ多数の大容量SiCパワーデバイスを供給して早期の省エネ効果実証を目標としています。産総研つくば西事業所に量産試作ラインが完成し、製造装置の立ち上げ中です。今年度中に大容量SBDが、来年度にはMOSFETが供給できる体制が整う予定です。
SiCパワーデバイスの普及による省エネ化を通して地球温暖化抑制に貢献エアコンのコンバーターをSiパワーデバイスで構成した場合とSiCパワーデバイスで構成した場合の損失の計算結果を比較すると、SiCパワーデバイスでコンバーターを構成することにより損失は約1/4に減少します。SiCパワーデバイスが普及すれば、電気機器の省エネ化が促進され地球温暖化の抑制に大きく貢献すると期待しています。 |
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共同研究者 参考文献 |
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