構造物の損傷診断の現状
日本では、橋梁、トンネル、高速道路、高層ビル、工場などの多くが戦後の高度経済成長期に整備され、これらの構造物は、今後10〜20年の間に次々と耐用年限を迎えます。これらの構造物の異常や劣化を早期に発見できれば、早めの補修で構造物を長持ちさせることができ、経済的な負担や社会不安を軽減することができます。
これまでの土木分野における損傷診断はひずみゲージや光ファイバーなどを用いたもので、その測定は点や線などのエリアの制限があるため、全体を測定するには多数のセンサーが必要でした。また、実際に破壊が発生すると、センサーが断線して検知不能になり、モニタリングが困難でした。
開発した応力発光センサーとモニタリングシステム
産総研では、世界に先駆けて応力発光体とその応用に関する研究を実施してきました。応力発光体は粉末状のセラミックス微粒子で、それぞれの微粒子が力学的な刺激により発光するセンサーの役割を果たしています。微粒子を含有した塗料を対象物に塗布すると、応力が集中した個所の微粒子が発光します。測定した発光強度から構造物に発生したひずみの状態やひび割れ開口量を可視化できます。開発したシステムは応力発光体のほか、発光強度分布をモニタリングするイメージセンサーや無線光センサー、発光強度から構造物の損傷を診断するデータベース、これらを統合するネットワークシステムから構成されています。
実際、交通量の多い橋梁を選定し、開発したモニタリングシステムの有用性・有効性を検証しました。その結果、大型車両が通過して橋梁に大負荷がかかる際に、異常な応力発光画像検出に成功しました。視認できるひび割れのほかに、視認が困難な微小なひび割れの箇所も応力発光により検出できました(図)。このモニタリングシステムを使えば、暗視野でひび割れの発生や進展度合を予測できます。
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| 応力発光による橋梁のモニタリング画像の例 供用中の橋梁に大型車両が通過して大きな負荷がかかる時のみ異常な応力発光画像が検出される |
今後の展開
ユーザーとの連携を強化し、各要素技術の高度化・最適化の相互のフィードバックにより、データベースのデータ蓄積と画像による異常診断ソフトウエアのアップグレード、各種強度検証・破壊予知・劣化検査・寿命診断への適用を進めます。

徐 超男 Xu Chao-Nan じょ ちょうなん