独立行政法人産業技術総合研究所
現在位置広報活動 > 出版物 > 産総研 TODAY Vol.10(2010) 一覧 > Vol.10 No.04 > 高電圧・大容量の電力変換器の高速駆動に成功

高電圧・大容量の電力変換器の高速駆動に成功

[ PDF:1.3MB
社会インフラ向けの大型電力変換設備を小型化できる技術

大橋 弘通の写真大橋 弘通 おおはし ひろみち
大橋連絡先
先進パワーエレクトロニクス研究センター
招聘研究員
(つくばセンター)

先進パワーエレクトロニクス研究センターでは、パワー半導体として期待の高いSiCやGaNについて、ウエハや素子製造技術の分野から、電力変換器としての性能実証に至るまでの広範囲の研究開発を行っています。こうした研究開発を通じて、環境負荷の少ない社会実現に寄与することを目指しています。

電力変換装置の限界

 電力変換装置は、エレクトロニクス装置と同様に高効率化、小型化、軽量化を重要な技術ターゲットとして発展してきました。しかし、これまでのシリコン(Si)ダイオードではスイッチング特性に起因する素子損失が大きく、スイッチング周波数に上限が生じるため、高電圧・大容量の電力変換装置の高効率化、小型化、軽量化にも限界が生じていました。

電力変換器の高速化・省スペース化

 産総研を含む5機関による今回の共同研究開発では、電力変換器の高速化を妨げている技術的な問題を突破するために、シリコンカーバイド(SiC)素子を導入することとし、スイッチング特性に優れる高耐電圧(6 kV級)のSiC−PiNダイオードとSi−IEGTを組み合わせた高速スイッチングモジュールを開発し、300 kVA試作器による動作検証を行いました。

 これまではSiダイオードの特性でスイッチング周波数の上限が決まっていました。今回開発した高速スイッチングモジュールでは、Siダイオードではなく、産総研のSiC素子の大面積化技術を活用することで開発された4 mm角の大面積SiC−PiNダイオード素子を、東芝製のSi−IEGTと組み合わせています。

 この高速スイッチングモジュールの利用により、Si半導体だけの電力変換器に比べ、高速駆動が可能になり、直列多重接続用の絶縁変圧器が不要の3レベル変換方式を採用できます。さらに、3レベル変換方式は素子のスイッチング周波数の2倍と等価な出力波形が得られるため、出力波形の歪みを除くためのフィルターの容量も削減できます。直列多重接続方式の電力変換装置では、絶縁変圧器はシステムの約半分のスペースを、フィルター設備はシステムの約1/4のスペースをそれぞれ占めており、省スペース化の大きな障害でしたが、3レベル変換方式により、電力変換効率を落とすことなく、装置スペースを大幅に削減することができます。

試作した4 mm角SiC−PiNダイオードの写真   試作した電力変換器の写真
試作した4 mm角SiC−PiNダイオード
2インチ(約10 cm)ウエハ上に作製した4 mm角のSiC−PiNダイオード。銀色の四角が1つのダイオードに相当する。
  試作した電力変換器
約1150 mm(奥行き)×約950 mm(幅)×約950 mm(高さ)

今後の展開

 今回の技術は、高電圧・大電力用の電力変換設備の大幅な小型化、省スペース化を可能とし、社会インフラとして利用される電力変換設備の普及拡大につながるものと期待されます。高電圧・大電力の電力変換設備の需要は世界的にも増加しており、この分野の産業競争力強化および実用化を目指して、引き続き5機関共同で研究開発を進める予定です。


関連情報:

戻る産総研 TODAY Vol.10 No.04に戻る