背景と経緯
H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスがヒトインフルエンザウイルスとの再集合によって変異し、強い毒性をもつインフルエンザウイルスになるのではないかと危惧されています。鳥インフルエンザのヒトへの感染を阻止するためには、養鶏場などでの鳥インフルエンザの発生をいち早く発見することが重要で、食の安全確保の観点からも早期発見技術が求められています。
産総研では小型無線センサー端末や受信データ解析システムの開発を進め、共同研究先の(独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所ではこのシステムを使って動物実験を実施し、鳥インフルエンザに感染した鶏の病態変化やウイルス伝播機構の解明を進めてきました。これらをもとに、鳥インフルエンザ感染の疑いを早い段階で検知できる早期発見プログラムなどを開発し、茨城県畜産センターの実験鶏舎で「鶏健康モニタリングシステム」を構築し、実用化に向けた実験に取り組んできました。
鶏健康モニタリングシステム
鶏の装着負担をできるだけ低減するため、外形1円玉サイズ、本体重量3 g以下(電池重量込み)の無線センサー端末を開発し、翼章型にすることにより、鶏への装着を容易にすることができました(図1)。この端末は、体温測定用の温度センサー、活動量モニタリング用の加速度センサーに加えて、無線モジュールを搭載しており、一定時間間隔(自由に設定可能)で体温や加速度データの取得・送信を行います。これによって鶏の体温パターンと活動量のパターンを常時監視でき、データベースを参照することで、インフルエンザ感染などを早期に発見することができます。
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| 図1 翼章型無線センサー端末装着例 | 図2 モニタリング画面例 |
今後の展開
茨城県畜産センターの実験鶏舎内に今回開発した無線ネットワークシステムを設置し、夏季の暑熱ストレスをモニタリングできる養鶏場の健康管理システムの開発に取り組んでいます(図2)。
実用化に向けて、機能の最適化、デバイスの低消費電力化などにより、無線センサー端末の小型化・低コスト化を進めるとともに、耐久性・安定性の向上を図り、生産性向上に向けた応用システムの開発を行います。

伊藤 寿浩 いとう としひろ
