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近赤外線を発するタンパク質の創製と利用
[ PDF:1.1MB
ウミホタルの発光反応を応用してがん細胞を見つける

近江谷 克裕の写真近江谷 克裕 おおみや よしひろ
近江谷連絡先
ゲノムファクトリー研究部門
主幹研究員
(北海道センター)

生物発光に関する基礎生物学から応用生物工学まで、つまりホタル採集から発光を利用したがんイメージングまで、発光生物の秘密を解き明かしそれを利用する研究を行っています。また、生物発光化学発光研究会代表として生物発光研究の普及、若手研究者の育成を目指しています。

がんの診断方法

 国民の健康維持にはがん疾病対策が重要です。微小ながん組織を徹底的に見つける方法として、大規模施設を必要としない術中光診断法の開発が望まれています。がん細胞をモニターする技術として、GFP(緑色蛍光タンパク質)のような光プローブを利用する方法も考えられていますが、GFPの蛍光は可視光線領域(波長範囲400−700 nm)にあるため生体透過性が低く、その利用には限界がありました。

ウミホタル発光系に着目

 筆者はウミホタル発光系に着目し、ウミホタルルシフェラーゼの糖鎖に近赤外線有機蛍光色素を導入し、人工的な生物発光共鳴エネルギー移動機構によって生体内の化学反応のみで近赤外線を発する発光タンパク質(近赤外線発光タンパク質)を作製しました。近赤外線は血液中のヘモグロビンに吸収されることが少ないので、生体内で発した近赤外線を外部のCCDカメラなどでモニターすることができます。これまでの近赤外線を発する蛍光色素は、蛍光であるため外部光源を照射して発光エネルギーを与える必要がありました。今回作製した近赤外線発光タンパク質は生体内の化学反応により生じるエネルギーで近赤外線を発するので外部光源を必要としません。この近赤外線発光タンパク質を医薬抗体の候補の一つであるDLK−1抗体と結合させ、近赤外線発光プローブとしました(図左)。次に、DLK−1抗原を発現する肝がん細胞をマウスに移植し、がん細胞が数mm程度の大きさに成長した段階で、近赤外線発光プローブを静脈より注入しました。24時間後、同じく静脈よりウミホタルルシフェリンを注入してCCDカメラでマウスを撮影すると、がん細胞が移植された位置で近赤外線を発しているのが観察できました(図右)。

図
近赤外線発光プローブの概念図
がんを見つける近赤外線発光プローブの基本、およびがん細胞移植マウスにおけるがん細胞イメージングを示す。

今後の展開

 今回開発した技術のさまざまな抗体への適用を試み、抗体治療薬の開発、抗体を用いた外科手術における術中診断、ライブ病理映像や抗体による再生細胞の評価など、多方面への応用展開を目指します。


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