役立つ地質情報
地面の下は直接目にすることのできない世界ですが、地層の構成物質や性質、地盤の強度など、地下の情報は私たちの生活にとってたいへん重要です。しっかりと締まった硬い地盤と水を含んだ軟弱な地盤では強度の差は明らかで、地震時の被害も違います。また、地盤の物性や化学的な特徴、地下水の流動などは生活環境にとっても有益な情報です。さらに地質情報は国土開発、産業立地、資源開発、廃棄物処分などのインフラ整備のための基盤情報でもあります。
このように安全・安心な社会を目指す上で、防災に強い街づくりや環境・資源の課題解決には、地質情報が重要な役割を担っています。地質情報の整備・公開および共有・活用については産総研だけでなく、産学官連携のもとでの検討が重要であることから、2006年4月、産総研コンソーシアム制度を使って、地質地盤情報協議会(http://www.gsj.jp/Sgk/consortium.html#annai)を設立しました。この協議会は、「地質地盤情報は公共財」を理念に、関連企業、大学・研究機関、政府関係機関、地方公共団体などの連携により、地質情報の利用拡大と新たな産業創出への貢献を目指しています。また、そのための社会の仕組み作りや情報の集積・活用に関する法整備についても議論を進めています。
公開・共有化の現状
地質地盤情報協議会ではボーリングデータを対象として検討を進めています。国土交通省の公共事業に関するボーリングデータについては、2008年3月、「KuniJiban」(http://www.kunijiban.pwri.go.jp/)が公開され、これにより地方自治体においても公開が促進されるという波及効果が見られました。しかし、民間や温泉のボーリングデータについては、個人情報保護の観点から情報の公開は進んでおらず、資源・電力関係などの情報にも課題が残っています。また、事業が終了すると、ボーリングデータが破棄されるケースが多々あります。
公開・共有化で見えてくるもの −意識の変革−
研究機関、国や地方自治体、民間企業や個人、それぞれが保有する情報の整備と公開を進め、それらを共有し活用することができれば、社会にとってたいへん有益です。
まず、それぞれのデータベースが整備され、さらにネットワークが構築されると、既存の情報と新たな調査結果の照合や多種多様なデータの統合が可能になり、精度の高い地質的な解釈ができるようになります(図)。また、地下構造の3次元表示などにより理解の増進が図れます。
次に、地質調査総合センターが全国地質調査業協会連合会と協力して進めているものに「地質リスク」があります(http://www.zenchiren.or.jp/)。地質リスクは、地質に起因する工事のリスクマネジメントのことで、これまで地質地盤条件の把握が不十分のままに工事を進めた結果、地質条件に起因する設計変更や事業コストの増大が発生することが多数ありました。これを避けるためには、工事前に地質条件を正確に把握し、それに合った適切な工事計画を立てることにより、結果的に工期の短縮、安全性、信頼性確保などのメリットを得ることができます。
|
|
|
ビジネス展開
開発・工事に関してより経済性と安全性を図るために、地質地盤情報を評価し適切な工事計画を策定する新しいビジネス展開が期待できます。課題として、一つは地質地盤情報を取り扱い、その解釈と評価を活かす社会的な枠組みを作ることです。例えば、地方自治体をモデルとした、地質地盤情報を活用した安全・安心な街づくりの提案があります。もう一つは新ビジネスに携わる人材を育成することです。今後、地質地盤情報協議会ではボーリングデータを含む地質情報全体の利活用を通じて、ビジネスモデル構築に貢献していきます。を行っていく予定です。
地質情報研究部門長
栗本 史雄(くりもと ちかお)


