背景
時間・周波数標準は、その精度が15桁で、あらゆる計測量の中で最も正確に計測でき、長さや電圧などほかの基本単位の精度をも支えています。一方、新しい時間・周波数標準として提案されている光格子時計は現在すでに16桁の精度を実現し、原理的には17桁を超える精度が実現できます。また、現状の時間・周波数標準の比較に用いられているGPS衛星の方法では、比較精度として約15桁で、光格子時計の周波数値をこれまでの定義であるセシウム原子時計を基に決めるのに長い測定時間を必要とし、さらに光格子時計同士を比較するにも精度が不十分です。産総研と電気通信大学および東京大学の共同研究チームが、非常に短い測定時間で光格子時計の周波数値を決めたり、光格子時計同士を比較したりする技術を開発しました。つくばから東京までの実際に敷設されている長さ120 kmの光ファイバーを用いて、世界で初めて100 km超えの光キャリア伝送を行い、つくばの周波数標準を基に東京大学のストロンチウム光格子時計の精密周波数測定を行いました。
120 km光ファイバー伝送による絶対周波数測定
水素メーザー、原子泉方式のセシウム原子時計、光周波数コムおよび光ファイバー長制御装置など高精密周波数計測のツールを総動員して、ストロンチウム光格子時計の遠隔周波数計測システムを構築しました。つくばでは、1.5 µmのレーザーが光周波数コムを経由して、水素メーザーに位相同期され、その光が東京に送られました。東京には、別の1.5 µmのレーザーを置き、その周波数をつくばから伝送された光周波数に位相同期しました。このレーザー光の一部は、つくばに返送され、元の光との位相比較によるファイバー長の変動の検出および制御に使われました。ファイバー長制御で位相雑音を減らした結果、1秒の平均時間における周波数伝送安定度は、8×10−16に達しました。このシステムを利用して、わずか3時間の測定で5.6×10−15の不確かさで東京大学のストロンチウム光格子時計の絶対周波数を決定することができました。決定されたストロンチウム光格子時計の周波数429 228 004 229 874.1(2.4) Hzは、国際度量衡委員会で採択され、秒の再定義の候補である「秒の二次表現」の周波数値更新のために貢献しました。
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| つくば−東京間の光ファイバーリンクを用いた光周波数伝送および絶対周波数測定 |
今後の展開
光ファイバーによる高精度周波数リンクの実用性が示されました。今後は、その高い周波数安定度を利用し、遠隔の光格子時計同士の比較などにも取り組んでいく予定です。

洪 鋒雷 Feng−Lei Hong こう ほうらい