レアメタル問題の構造
エネルギー資源の有限性がもたらす深刻な危機は広く認識されていますが、多様な代替エネルギー源が想定されるエネルギーよりも代替が困難で、偏在性も著しいレアメタルの供給不安も非常に深刻です。わが国の製造業はレアメタルに強く依存していますが、残念ながら日本国内(特に陸上)ではレアメタルはほとんど産出されません。レアメタルが大きな問題になっている理由を以下に述べます。
・需要について
(1)巨大な人口をもつ中国やインドなどの急速な経済発展が、レアメタルの需要を拡大させていること。
(2)IT革命、グローバルな最適生産システム(モジュール化+低い労働賃金)およびボーダーレスに移動可能な膨大な資本が、世界中で生産力の急拡大(=資源消費急増)を可能にしたこと。
(3)エネルギー・環境問題への政策的対応のために、レアメタルを必要とする膨大な新製品群が必要とされていること。(グリーンレアメタル)
・供給について
(4)中国や資源メジャーが世界中でレアメタルなどの資源の寡占(かせん)化を進めていること。
(5)資源ナショナリズムや環境保護のため新鉱床開発に長い期間と多額の費用が必要になったこと。
(6)高品位鉱の枯渇傾向に伴って利用が必要となる低品位鉱の採掘や選鉱には大きなエネルギーが必要で、近い将来のエネルギー価格の上昇を考慮すると既存技術では低品位鉱の利用には限界があること。
・投機について
(7)膨大な投機資金が株式や土地に代わる投資先を探しており、資源は有望な投資対象の候補になっていること。
これらの結果、レアメタルの需要は持続的に増加し、また短期間で急増する可能性が高くなる一方、供給の急増は困難になっています。
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| エネルギー・環境問題とレアメタル |
金融危機以降の情勢
2008年秋の金融危機に端を発した不況によって、世界的に資源需要が減少し、多くのレアメタルの価格も下落しましたが、上述の要因は全く変化せず、寡占化が著しい一部のレアメタルでは価格下落も起きませんでした。景気回復とともに、または回復を先取りして、レアメタル需給の逼迫(ひっぱく)と価格上昇が起きる危険性が高いと考えられます。たった1種類のレアメタルの供給が制限されることで、それを使う製品の生産も必然的に制約され、国際競争の激しい産業においては、産業自体が大きな打撃を受けることも危惧されます。
レアメタルタスクフォースの取り組み
産総研レアメタルタスクフォースでは、資源探査、使用量削減技術、代替材料技術、リサイクル技術といったマテリアルフロー全体についての、産総研の多様な研究ポテンシャルと蓄積した技術情報を生かし、緊急性と影響の大きい技術要素を選択して対策技術の開発に取り組み、わが国の経済安全保障に技術開発で貢献することを目指しています。
サステナブルマテリアル研究部門長
中村 守(なかむら まもる)

