SWCNT光吸収体の開発
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を応用した高性能な光吸収体(黒色コーティング)を開発しました(図1)。紫外から遠赤外の極めて広い波長範囲にわたり、光を98 %以上の高効率で一様に吸収できます。いわゆる黒体[※]に非常に近い性質をもった世界屈指の材料であり、さまざまな用途に対して質の高い「黒さ」を提供することができます。
ナノメートルスケールの構造が光を吸収する
光吸収体は光と熱のエンジニアリングに欠かせない材料です。高い光吸収と熱放射、そして低い光反射を特徴とし、カメラや精密光学機器の遮光、視覚的に美しい黒さが必要とされるディスプレイ、さらに赤外線吸収材や熱型赤外センサー、電子機器の冷却などにも利用することができます。黒体は理想的な光吸収体と考えることができる仮想的な存在です。しかしこれまで、黒体のように広い波長範囲にわたって一様に高い光吸収率を得られる材料を実現することはとても困難でした。
今回私たちが開発した光吸収体は、産総研独自のSWCNT合成技術「スーパーグロース法」を応用したものです。目的とする基板の表面にSWCNTの集合体からなる膜を直接合成します。このSWCNT膜の厚みと密度を調節することにより、紫外から遠赤外の非常に広い波長範囲(0.2 µm−200 µm)にわたり98−99 %の一様かつ高い吸収率を実現することができました(一般的な黒色膜は赤外域で吸収率97 %以下)。このように吸収率が高い材料を広い波長範囲にわたって評価することはとても難しく、精密な光計測技術をもつ計測標準研究部門において可能となりました。合成されたSWCNT膜を電子顕微鏡で観察すると、SWCNT繊維が10数nm間隔で高密度に垂直配向したナノ構造を形成しています(図2)。この配向構造が光をトラップして逃さず、高い光吸収性を生み出す一因となっています。
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| 図1 200 mm(8インチ)シリコン基板上に合成された光吸収体 | 図2 光吸収体の走査型電子顕微鏡像 |
今後の展開
光遮へい、熱型赤外センサー、放熱器、光放射・温度標準など幅広い分野において応用が期待されます。今後は、企業との共同研究を通して、用途・商品開発に取り組む予定です。

水野 耕平 みずの こうへい
