研究の目的
網膜は活動が活発で酸素を大量に消費する組織です。しかし、厚みが0.2−0.3 mmしかない薄い膜組織であり血管は最低限しかありません。このため、生活習慣病などによって血管の亀裂や循環障害が起こると酸素が不足し、網膜組織は直接的なダメージを受けることになります。そこで私たちは、早い段階で網膜組織の代謝異常を見つけられるよう、酸素飽和度を測定するための眼底カメラを開発しました。
酸素飽和度計測装置
血中のヘモグロビンの色が酸素飽和度に応じてわずかに変化することを利用し、分光分析と回帰分析によって判別しています。また、スクリーニングに適した非侵襲性に気を付けており、低光量かつ無散瞳での高速計測ができる、分光分析機能をもった走査型レーザー検眼鏡(分光SLO: Scanning Laser Ophthalmoscope)を開発しました。
健常者のボランティアによる検証を行い、網膜上の2次元酸素飽和度分布が計測できることを確認しました。酸素飽和度は輝度分布によって示され、白く描写されている血管は酸素飽和度が高い動脈に、暗い血管は静脈に対応しています。
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病理眼での検証
京都大学医学部眼科学教室と共同研究を行い、この装置の病理眼に対する有効性を検証しました。その結果、糖尿病網膜症や血管閉塞症において特に有効性のあることが示唆され、酸素飽和度低値を示す網膜部位では、これまでのフルオレセイン血管造影でも異常を認められることが確認できました。フルオレセイン血管造影は侵襲性が高いため、健康診断などのスクリーニングには使用できませんが、非侵襲かつ短時間での計測を可能とするこの装置によって、自覚症状の出にくい眼底疾患や生活習慣病を早期に発見できるようになればよいと考えています。
光技術研究部門
古川 祐光(ふるかわ ひろみつ)
有本 英伸(ありもと ひでのぶ)
白井 智宏(しらい ともひろ)

