独立行政法人産業技術総合研究所
現在位置広報活動 > 出版物 > 産総研 TODAY Vol.9(2009) 一覧 > Vol.9 No.07 > ベンチャー開発センターにおける「製品化」に向けた取り組み
本格研究ワークショップより
本格研究 理念から実践へ
ベンチャー企業創業支援が支える本格研究
[ PDF:1.5MB

ベンチャー開発センターにおける「製品化」に向けた取り組み


酒井 夏子の写真

ベンチャー開発センターは、2002年10月に、科学技術振興調整費戦略的研究拠点育成事業「ベンチャー開発戦略研究センター」を前身として発足し、2007年5月に改称・組織変更して現在に至ります。産総研の本格研究の「製品化」の部分を担うべく、産総研内外の技術シーズのベンチャー創業等による事業化へ向けた育成・支援を行っています。

酒井 夏子 (さかい なつこ)前列右から2 人目
酒井連絡先
ベンチャー開発センター
開発企画室


組織概要

 ベンチャー開発センターは、2002年10月、科学技術振興調整費戦略的研究拠点育成事業「ベンチャー開発戦略研究センター」を前身として発足し、(1)公的研究機関発の研究シーズを事業化し、新事業として展開していく方法の社会科学研究と、(2)その実践であるスタートアップ開発戦略タスクフォース(後述)の実行および(3)創出されたハイテクスタートアップス(ベンチャー企業)の支援体制確立を行いました。科学技術振興調整費事業の終了後、さらなる継続的なベンチャー創出・支援活動を目指して2007年5月に改称・組織変更し現在に至っています。本格研究における「製品化」の部分を担うべく、産総研内外の技術シーズの事業化へ向けた育成・支援を行っています。

活動概要

(1)スタートアップ開発戦略タスクフォース(以下、タスクフォース)

 タスクフォースは産総研内外の技術の発明者(研究者)と当センターが擁するスタートアップ・アドバイザー(ビジネス人材)によって構成され、製品化に必要な技術の高度化、新たな知的財産の創出、マーケティング調査などの活動を通してビジネスプラン策定を行い、ベンチャー創業による事業化を目指す制度です。より成功確率の高いベンチャーを創出するため、スタートアップ・アドバイザーがタスクフォースの当事者としてかかわることが特徴です。当センターでは定期的な会議での報告・検討、実地見学、ヒアリングを通して常にタスクフォースの進ちょくと課題を把握し、適切に対応すべく活動しています。顧客の動向・市場性を調査し、ビジネスプランの高度化に資するため、タスクフォースが出展する展示会への支援を行っています。毎年2月ごろにタスクフォース成果報告会を主催し、将来の協業先や出資元となる会社・投資機関などに技術内容やビジネスプランを紹介する機会を設けています。

(2)創業にむけた支援、創業後の支援

 当センターでは、研究者などからの創業に関する各種相談に対応する窓口を設けています。研究者の負担軽減を図るため、産総研内イントラに「起業支援手引書」を掲載するとともに、会社設立の代行業務を実施するなど、オーダーメードかつワンストップの支援を心掛けています。創業後のベンチャーに対しては「ベンチャー技術移転促進措置実施規程」に基づき、知的財産権に係る支援、研究施設などに係る支援、情報提供、専門家相談など、ベンチャー企業による技術移転を促進するための各種措置を講じています。産総研技術移転ベンチャー企業については事業実施ヒアリングなどを通じ、技術移転の進ちょく状況や課題の把握に努め、ともに解決に取り組みながら新たな支援の可能性について検討を行うことで、より成功確率の高いベンチャー育成につなげていきます。

図1
図1 ベンチャー創出・支援研究事業

設立されたベンチャー企業の例

 2008年度末までに累計98社の産総研の研究成果を活用するベンチャー企業が生まれています。広報誌においても最新の産総研発ベンチャー企業の情報を取り上げています。各企業の事業内容、および広報誌の掲載内容につきましては、ホームページhttp://unit.aist.go.jp/incs/ci/をご覧ください。

本格研究への取り組み状況

 当センターでは、本格研究における「製品化」の一翼を担うべく、産総研内外のシーズ発掘と、事業化に必要な検討を常に行っています。2008年度に開催された「本格研究ワークショップ」の「産業化シナリオディスカッション」にパネリストの一員として参加し、研究者から話題提供された技術シーズについて、ベンチャー創業による事業化の可能性を技術課題、顧客は誰か、市場規模、ビジネスプランなどの面から検討を行いました。市場や知的財産に関するデータを集め、実際にベンチャー企業の経営に携わる方の意見もヒアリングし、さまざまなビジネスプランの可能性と課題を抽出しました。ベンチャー企業として収益を得られるか否かの観点から検討したため、技術の産みの親である研究者の方には、厳しい指摘となったこともあったかと思います。研究現場では技術の進ちょくのみに意識が傾きがちですが、製品化研究を進めるうえでは、技術の出口をイメージして適切な目標設定と開発計画を行うことがとても重要です。また、産総研の技術を世の中に広く問い、産業を活性化させていく気概も大切であると考えています。「産業化シナリオディスカッション」が、研究者が技術開発の方向性とスピードアップを考えるきっかけとなり、また当センターも、幅広い技術シーズの把握と支援方法について関連部門とともに検討する機会となったと考えています。

図2
図2 産総研におけるベンチャー支援

期待される役割、今後への意気込み

 産総研では、第2期の中期計画で、「産総研発ベンチャーを100社以上起業する」と掲げています。ベンチャー企業を数多く創出することで事業化研究推進の意識を向上させた効果はありましたが、創出された企業においては、事業計画の問題や昨今の経済状況の悪化により経営に苦戦している面も多く存在します。特に産総研発ベンチャーは新しい技術で新市場創出を図る傾向にあるため、技術開発リスクと市場創造リスクとを伴う特徴があります。創出・支援双方において刻々と変化する社会の状況に応じて最適な施策を考えていくべきと考えています。当センターでは2008年4月に着任した河野満男センター長のもと、「より成功確率の高いベンチャーの創出と支援」を目標に、過去から現在に至る技術シーズ発掘〜タスクフォース運営〜ベンチャー企業創出の流れにおいて、成功例・失敗例の調査・分析と、現行のタスクフォース運営制度の見直し・改革を行っています。7年間のベンチャー創出における実践で積み重ねた知見と経験を最大限に活用し、産総研の技術移転施策全体へ資することを目指して活動してまいります。

図3
図3 産総研技術移転ベンチャーなどの創出数と分野

前頁

戻る産総研 TODAY Vol.9 No.07に戻る