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セラミックスの亀裂進展抵抗特性試験法の規格化

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標準仕様書TS R 0002の制定


制定の背景

 ファインセラミックスの破壊靭性(じんせい)値に関する工業標準には、JIS R 1607として1990年に日本が世界で初めて制定した規格がありますが、対象とする材料は、その当時に主流であった微細組織からなる脆性(ぜいせい)セラミックス[1]です。しかし、今日の商取引の中心は、強化相を添加したセラミックス基複合材や、微細組織を適度な寸法・配向性をもつ棒状や板状などに制御した高靭(こうじん)化セラミックス[2]であり、先の規格の対象から外れるものが大部分を占めているのが現状です。この種のファインセラミックスは、亀裂が発生することによって強化作用が増し、最大破壊特性が発揮されることを特徴としています。したがって、その破壊特性を適切に評価するには、破壊靭性値(KIC)だけでなく亀裂進展抵抗特性(R曲線)を評価することが要求されます。しかし、これまでに制定された破壊靭性値試験法(JIS R 1607)では亀裂進展抵抗特性を評価できないことが憂慮(ゆうりょ)されていました。一方、研究室レベルでは、試験片を準静的破壊させる特殊な実験技術などにより、亀裂進展抵抗特性を評価する試験法が開発されてきましたが、これらの試験法は特殊な装置や治具が必要なことから標準試験法として制定されるには至っていません。そこで、これらに代わる簡便かつ原理が明確で信頼性が高い標準試験法が望まれていました。

破壊曲線からR曲線へ

 産総研では2005年度から2007年度に、標準基盤研究として「ISO/TC206(ファインセラミックス)の戦略的運営のための基盤研究推進」に関する研究を実施し、この中で「ファインセラミックスのき裂進展抵抗特性(R曲線)試験方法」のTS(Technical Specification:標準仕様書)素案を作成しました。金属などの工業材料の破壊靭性を計測する多くの破壊力学試験手法を参照し、背面歪(ひず)みと負荷荷重により破壊曲線を精密に描く古典的な破壊力学手法に立ち返ることによって、亀裂進展抵抗特性(R曲線)を評価する試験法を確立しました。ポイントは、破壊試験中の背面歪みを用いて、亀裂進展を妨げる作用が働く領域の大きさを正しく見積もり、亀裂の長さと亀裂進展抵抗との関係を正確かつ簡便に評価する手法を確立することでした。さらに、この試験で用いる試験片はファインセラミックスの破壊靭性値試験法(JIS R 1607)と同一の予亀裂導入破壊試験片とすることによって簡便さと汎用性を高めました。

図

破壊力学試験片の模式図
荷重−背面歪み曲線から機械的亀裂先端が同定できる

今後の展望

 今回制定された標準仕様書TS R 0002は、ファインセラミックスを対象とした亀裂進展抵抗特性試験法として世界初の標準試験法です。この試験法を標準仕様書として公表することで広く産学官の研究者の意見を募り、より完成度の高い規格を目指しています。


宮島 達也の写真

宮島 達也 みやじま たつや
宮島連絡先
サステナブルマテリアル研究部門
高耐久性材料研究グループ
主任研究員
(中部センター)

旧名古屋工業技術試験所入所。各種新素材の力学物性評価を専門としています。新素材の高性能化に伴いその破壊や変形機構も複雑になっています。SEMを利用した亀裂のその場計測法の開発、光学顕微鏡と計装化インデンターを組み合わせた顕微インデンターの開発など、破壊と変形に関連する物性値評価法の高精度化に取り組んできました。今後も実験力学技術の開発を通じて社会に貢献していきたいと考えています。


関連情報:

●用語説明
[1]脆性セラミックス
 いったん亀裂が発生する負荷状況になると急激に全体破壊まで進行する破壊様式を示すセラミックス。身近な例としては、窓ガラス(ソーダ石灰ガラス)が挙げられる。

[2]高靭化セラミックス
 脆(もろ)さを克服するため、亀裂先端部での相転移や亀裂と粒子との相互作用など微視的機構を利用し全体の破壊抵抗を高めたセラミックス。部分安定化ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナなどが実用化されている。

 


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