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有機イオン性プラスチッククリスタルの開発
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これまでにない柔軟性に富む固体電解質への応用に期待

松本 一の写真松本 一 まつもと はじめ
松本連絡先
ユビキタスエネルギー研究部門
蓄電デバイス研究グループ 主任研究員
(関西センター)
難揮発性、難燃性といったこれまでの分子液体では得られないユニークな特徴をもつイオン液体を低粘度、低融点化し、電気化学デバイス用電解液へ適用することによって、固体デバイスに匹敵する安全性、長寿命化を達成することを目指しています。

固体のイオン液体がプラスチッククリスタルだった!

 私たちは難揮発(なんきはつ)性、難燃性でかつイオン伝導性を示すユニークな液体であるイオン液体をリチウム二次電池、電気二重層キャパシター、色素増感太陽電池などの電気化学エネルギーデバイス用の新しい電解質として活用することを検討してきました。特にリチウム二次電池では電解液の中のリチウムイオンの輸送特性が電池の性能を左右するため、できるだけ低い融点と粘性を示すイオン液体の開発に注力してきました。それらの中から融点は90 ℃と高いものの、透明でかつ柔軟性に富んだ固体が存在することを見い出しました。示差走査型熱量計(DSC)による分析から、融解エントロピーが著しく小さく、−50 ℃もの低温下で固体の融解時に見られるほどの大きなエンタルピーが観察され、この固体がプラスチッククリスタル(柔粘性結晶)であることがわかりました。

新しい固体電解質の可能性

 今回得られたプラスチッククリスタル塩の化学構造は図1に示すように脂肪族四級アンモニウムカチオン(N1223+)とボレート系ペルフルオロアニオン([CF3BF3])からなる単純な構造です。しかしアンモニウムカチオンの側鎖のプロピル基の炭素数を1つ増すだけで融点が室温以下の液体に、また逆に1つ減らすと柔軟性の全くないただの固い固体となってしまうことから、このプラスチッククリスタルが絶妙な組成の元に成り立っていることがわかります。また外観は透明なガラスか非結晶ポリマーのように見えますが、れっきとした結晶です(図1)。

 さらにLi+やI, I3など、リチウム二次電池や色素増感太陽電池の電解質に含まれるイオンを添加すると、図2に示すように添加前の2桁(けた)以上もイオン伝導度が増加し、固体にもかかわらず室温25 ℃において10−3.5 S cm−1もの高い導電性を示すことがわかりました。固体電解質としては、ポリマーに支持電解質を添加したポリマー電解質、LISICONなどの酸化物系が研究されていますが、前者が柔軟性に優れるもののイオン伝導度が低く、後者はイオン伝導度が高いものの柔軟性がないことに対し、今回開発した有機イオン性プラスチッククリスタルは、柔軟性をもち、かつ高いイオン伝導度を示すことから、第3の新しい固体電解質としての応用が期待されます(図2)。

図1   図2
図1 開発した有機イオン性プラスチッククリスタルの外観と化学構造
図2 いろいろなイオンを添加したN1223[CF3BF3]の伝導度の温度依存性

今後の展開

 イオン液体の低粘性、低融点化を目指してさまざまなイオン種が開発されており、それらの組み合わせの中には室温で液体ではないものの、ユニークな結晶性固体(プラスチッククリスタル)が存在することがわかりました。今後はイオンや結晶構造と物性の相関を詳細に検討し、さらなるイオン伝導度の向上に取り組む一方、実際の電気化学デバイスへの組み込みだけでなく、透明でかつ柔軟な結晶といった特長を生かした新しい用途開拓を目指します。


関連情報:
  • 共同研究者
    周 志彬(元産総研。現 華中科技大学(中国、武漢)教授)
  • 参考文献
    Z.B.Zhou and H.Matsumoto: Electrochem. Commun., 9(5), 1017 (2007).
  • 特許
    PLASTIC CRYSTAL, WO 2008/081811 A1 ( H20/07/10 ).

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