小型インクジェット装置の開発
スーパーインクジェット装置本体の大きさを体積比でこれまでの約1/600以下に縮小(制御部を除く)し、バッテリー駆動もできる可搬型スーパーインクジェット装置を開発しました(写真1)。
開発したスーパーインクジェット装置は、これまでの装置構成はそのままにして、移動ステージや電源アンプの小型化により、塗布面積以外はこれまでの装置とほぼ同等の機能を保っています。装置は、5 Vのバッテリー直流電源での駆動もできます。
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小型化のポイント
開発したスーパーインクジェット装置本体の大きさ(縦×横×高さ)は110 mm×70 mm×60 mmであり、これまでの装置(700 mm×700 mm×600 mm)に比べて、超小型化しました。
今回の小型化のポイントは、次の3点です。
(1)従来の装置がインクジェットヘッドを固定し、基板を載せたステージを移動させて描画していたのに対して、今回開発した超小型スーパーインクジェット装置はヘッド側を移動させる構造としたこと
(2)これまで、移動ステージの駆動にリニアモーターを使用していたが、今回はヘッドの移動機構として、超音波モーターを採用したこと(写真2)
(3)電源アンプの機能を見直して小型化し、本体に内蔵したこと
インクジェットは、ほかの精密加工技術や印刷技術とは異なり非接触で基材を加工することができるので、推力の小さな超音波モーターを用いても、マイクロメートルオーダーの加工ができます。また、移動機構にエンコーダーを内蔵しクローズドループ制御方式を用いることによって、精密な位置決めを可能としました。
これらの工夫により、これまでのインクジェット装置とほぼ同等の機能を保ったまま、装置本体の大きさを手のひらサイズにまで小型化できました。また、消費電力が従来の1.5 kWから約20 Wに格段に減少し、直流5 V程度の電源で駆動できるためバッテリーによる駆動が可能となりました。
インクジェットヘッド側を移動させる構造にしたことにより、基板の上の任意の場所に装置を置き、超微細印刷を行うことができます。例えば名刺の上に超小型スーパーインクジェット装置を置き、目に見えないサイズの文字や2次元バーコードなどの標識を描画することが可能です。偽造防止のためのセキュリティー印刷や、個体識別のための微細コードマーキングへの適用などが期待されています。金属超微粒子のインクなどを使えば、これまではクリーンルーム内で作製していたような微細な回路形成などもできますので、いわば“ポケット工場”と呼べるかもしれません。
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今後の展開
超微細インクジェット技術は、産総研技術移転ベンチャーを通じて実用化が図られています。今後、さらなる小型化と技術の完成度を高め、近い将来実用化する予定です。

村田 和広 むらた かずひろ
