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本格研究ワークショップより
本格研究
 理念から実践へ
メタンハイドレート資源開発における本格研究
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メタンハイドレート資源開発の商業化への道のり


成田 英夫の写真

1994年度から、「ニューサンシャイン計画総合研究」においてメタンハイドレートの研究を開始。2001年度から、経済産業省「メタンハイドレート開発促進事業」に参加し、「生産手法の開発」を担当。現在、本事業の実施母体である「MH21研究コンソーシアム」の生産手法開発グループリーダーおよび産総研メタンハイドレート研究ラボ長として、企業・大学と連携し、商業化のための技術整備を推進中。

成田 英夫 (なりた ひでお)
成田連絡先
メタンハイドレート研究ラボ


世界的に加速する天然ガス需給

 BP世界エネルギー統計2008によれば、世界の天然ガス埋蔵量は約177兆m3、生産量は約3兆m3/年であり可採年数は約60年です。日本における消費は1970年以降直線的に増加していますが、2007年は世界の生産量の3 %に相当する900億 m3に達しました。総合資源エネルギー調査会需給部会の中間取りまとめ「2030年のエネルギー需給展望」では、2030年の天然ガスの一次供給エネルギーに占める割合を18 %まで高めることとしており、日本の天然ガス需要は今後も引き続き増加するものと見込まれます。天然ガスの消費拡大の動きは、非OECD(経済協力開発機構)諸国、わが国周辺諸国、北米、南米などを中心に世界的にも高まっており、長期的な安定供給の必要性が増しています。さらに、2005年以降の急激な原油高に連動して天然ガス価格が急激な高騰を示しており、日本の液化天然ガス輸入価格も43円 /m3とここ3年間で約2倍となりました。このような状況の中、各国において在来型ガス田の開発促進のみならず、コールベッドメタンやタイトサンドガスなどの非在来型天然ガス資源の開発が進んでいます。

在来型ガス田とは異なるメタンハイドレート資源からの天然ガス生産手法

図

推定されている日本周辺のメタンハイドレート資源の分布
青色部分:物理探査によって得られたBSR(Bottom Simulating Refrector:海底擬似反射面)の分布。BSRが認められる領域にメタンハイドレート資源が賦存している。
産総研 地圏資源環境研究部門 佐藤幹夫氏の情報を基に作成。

 メタンハイドレート資源は、世界の大陸縁辺部の海域や凍土地帯に分布しています。日本でも南海トラフなどわが国周辺海域に分布しており、相当量の天然ガス資源として期待されるため、経済産業省ではその開発可能性の見極めと商業化のための技術整備を行うことを目的に2002年に「メタンハイドレート資源開発促進事業」を開始し、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構、財団法人 エンジニアリング振興協会、産総研からなるMH21研究コンソーシアムによって実施されています。産総研は、2008年度で終了するフェーズ1において、貯留層特性の解析技術、生産性・生産挙動予測技術、地層の圧密変形予測技術、分解採収手法の評価技術など生産手法の開発のための研究開発を実施しています。これまでに、東部南海トラフ海域のメタンハイドレート資源からの天然ガス生産手法として貯留層の圧力を低下させる減圧法が有効であることを見いだし、カナダにおける陸上産出試験を通じてその実証がなされたところです。

 メタンハイドレート資源から天然ガスを生産する際には、在来型天然ガス資源の開発では見られないいくつかの特徴があります。掘削だけではガスが噴出してこないため何らかの刺激によってメタンハイドレートを分解してメタンガスにする必要があること、生産に伴ってガスの流れやすさや強さ、熱の伝わり方などの貯留層の特性が大きく変化すること、メタンハイドレートを分解しガスにしたときには周りから多くの熱を吸収し温度が低下することなどが代表的な特徴です。研究開発当初は世界的にも参考とする事例がありませんでした。このため、メタンハイドレート層の温度・圧力条件を再現した原位置条件における測定技術の開発などの解析・評価技術基盤を整備することから着手し、現在、産総研では世界にも例を見ない総合的なコア試験が可能となりました。振り返れば、この成功の陰には、メタンハイドレートの物理化学を中心とするこれまでの第1種基礎研究の蓄積に負うところが大きかったと思われます。

商業化に向けて重要な中核拠点としての役割

 2009年度からは、商業化への技術整備を本格化するためのフェーズ2が開始予定です。フェーズ2では、商業化のために何が必要かという意識と目的を持って取組むことが強く要請されます。商業化にあたっては、石油・ガス開発企業の多額の投資に見合うだけの生産可能な資源量があるかどうか、事業レベルのガス供給量と供給の安定性が確保できるか、安全な操業が可能か、事業としての収益が見込める経済性が見通せるか、海洋・海底環境に影響を及ぼさない社会受容性のある生産が可能か、供給するガスが現行インフラと整合性があるかなどの種々の要件を技術整備によって満たす必要があります。これらの商業化に必要な技術的要件を抽出し、それを解決するための技術整備や基準策定を実現するためには、石油・ガスの開発生産に携わっている企業など各分野の知識と経験を有機的に結合しながら実践的にあたることが不可欠と考えられます。これまでのMH21コンソーシアムの取組みによって、相当量のメタンハイドレート資源の存在が確認され、そこから天然ガスが生産できる技術的見通しが立っています。今後は、回収率や生産性の向上、合理的な生産システムの構築などを目的とした、より経済性の高い実践的な生産手法の開発がこれまで以上に求められることとなります。それらの取組みが具現化され日本の持続的経済成長に貢献するためには、産総研のもつ試験設備群と集積したノウハウを活かしながら、企業、大学の人材育成などの取組みによって日本および世界の中核研究機関としての役割を果たしていくことが必要と考えています。

メタンハイドレート堆積物コア試料(天然コアの再現試料)の燃焼の様子の写真   陸上産出試験におけるフレアの写真

メタンハイドレート堆積物コア試料
(天然コアの再現試料)の燃焼の様子

 

陸上産出試験におけるフレア
(2008年3月、写真提供:独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)


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