CIGS太陽電池のエネルギー変換効率の向上
銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)からなる非シリコン系の半導体材料CIGSを用いた太陽電池は、光電変換層の厚さを数μmと薄くできるという利点があり、自動車の屋根や建造物の曲面などへの設置や、持ち運び可能な軽量でフレキシブルな太陽電池への応用が期待されています。これまでフレキシブルCIGS太陽電池の高性能化は困難でしたが、新しいアルカリ添加制御技術、およびポリマー基板の新しいハンドリング技術など、フレキシブルCIGS太陽電池のエネルギー変換効率を飛躍的に高める技術を開発しました。これらの技術により、セラミックス、金属箔(はく)、ポリマーなどさまざまなフレキシブル基板を用いた高性能な太陽電池の作製に成功しています。
ASTL法を用いたフレキシブルCIGS太陽電池
高効率なフレキシブルCIGS太陽電池を作製するために、CIGS光吸収層へのアルカリ添加をいかに再現性よく制御するかという技術課題がありました。これまで用いられてきたアルカリ化合物の多くは潮解性があるなど、物性的に不安定で取り扱いが難しく、再現性よく性能を向上させることはできませんでした。そこで、図1に示すように、裏面電極層を形成する前に、安定なアルカリ化合物であるケイ酸塩ガラス層を基板上に形成し、この層の製膜条件を変えて、裏面電極層を通過してCIGS光吸収層に取り込まれるアルカリ量を制御する技術を開発しました。この技術により再現性よく、しかも簡便にアルカリ添加を行うことができ、CIGS太陽電池のエネルギー変換効率の大幅な向上が実現しました。表面が平滑なセラミックスシートを基板に用いて作製したフレキシブルCIGS太陽電池では、小面積セルの真性変換効率として17.7 %を達成しました。また表面がやや粗いチタン箔(はく)を基板に用いた場合でも17.4 %を達成しています(図2)。さらに、超軽量な太陽電池の実現が期待されながら、CIGS光吸収層の作製温度に制限があるため高効率を得ることが困難とされていたポリマー基板を用いた場合でも、14.7 %の高い効率を達成できました。セラミックスシート基板で達成された17.7 %は、現在までに報告されているフレキシブルCIGS太陽電池の効率として最も高い値です。
![]() |
![]() |
| 図1 今回開発した高効率フレキシブルCIGS太陽電池の構造 | |
| 図2 ガラス小瓶の側面に貼られたチタン箔基板フレキシブルCIGS太陽電池 |
今後の展開
小面積のフレキシブルCIGS太陽電池で今回実現した高効率化技術を、実用レベルのサブモジュールサイズまで拡大したものに応用し、スケールアップに伴う集積化プロセスや歩留り向上など技術課題の解決に向け取り組んでいきます。また、ラジカル化したセレンの応用などによってさらなる高効率化技術の開発を目指します。

石塚 尚吾 いしづか しょうご
