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新しいエネルギー技術を社会へ
−実証・評価によるアプローチ− |
過冷却蓄熱を利用したコージェネレーション実証研究 |
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コージェネレーションの課題くつろぎの空間を演出する調度品として、暖炉を備えることがわが国の住宅でも珍しくなくなりました。囲炉裏や暖炉に火をともせば、調理や暖房の熱だけでなく室内を柔らかく照らす光も得られます。熱や光、電気、運動など異なる形態のエネルギーを同時に得て利用できるようにする装置が、コージェネレーション・システムです。 コージェネレーションの利点は、熱や電気の一方だけを利用する場合よりも燃料の利用効率を高められることです。しかし、回収した熱をすべて有効に利用できるかどうかが、大きな問題となります。なぜなら、(1)光や電気に比べて排熱の供給量は過大になりがちで、(2)需要が季節や時間帯で変動しやすく、(3)光や電気と需要時間帯が異なる場合も多いからです。 実証研究の概要コージェネレーションにおける前述の課題(1)は、ホテルのような熱需要の大きい施設、あるいは熱需要の大きい寒冷地に適用することで解決できます。課題(2)の解決には、需給に応じた最適なエネルギー・マネージメントを行う必要があります。また、課題(3)の解決にはエネルギー貯蔵、とくに蓄熱機能が重要となります。 そこで、課題(2)、(3)を解決するための実証研究を2005年から札幌市と共同で実施しています。実施場所は札幌市立大学芸術の森キャンパスの新棟(4階建て総床面積4,157 m2、14教室)で、図1のように給湯需要と暖房・電力需要の一部にマイクロガスタービン(MGT)コージェネレーション・システムで発生させた電気と熱を供給しています。 このシステムの特徴の1つは、MGTの排熱を一時的に貯蔵する蓄熱装置に、物質の過冷却現象を利用する産総研独自の仕組みを利用している点です[1]。
甘い蓄熱材と過冷却歯の健康増進やダイエットにキシリトールやエリスリトールなどの糖アルコールが多用されるようになってきました。このシステムの蓄熱材には、そのような糖アルコールの一種のスレイトール(D-threitol)を用いています。スレイトールを用いた理由は、融点(87 ℃)が温水供給に適していること、安定かつ安全であること、量産化で安価になる見込みがあることなどにあります。スレイトールは常温では図2のように白色の結晶、高温では透明の粘液になり、融解/凝固時に250 kJ/kgの熱を吸収/放出するので、融点を挟む温度域で利用すれば、小さな容積で大きな熱を貯蔵することができます。
スレイトールの融液を冷却すると、融点では凝固を開始せずに液相のままで過冷却され、融点より20〜60 ℃も低い温度になって初めて凝固を開始し、凝固熱で自身の温度が融点に回復します。この特性を活かせば、融点よりも低温で凝固熱を貯蔵し、必要時に人為的に凝固を開始させて融点に回復した高温の熱を取り出すことができます。 スレイトールは従来から蓄熱材候補に挙げられてきましたが、大きな過冷却を解消できないという理由から、実用に供されることはありませんでした。そこで、産総研で開発した図3のような複槽式の過冷却解除方法を適用することで、単なる相変化蓄熱材ではなく過冷却蓄熱のメリットも兼ね備えた機能的蓄熱材として、スレイトールを適用することができました。
蓄熱特性蓄熱装置の運転状態は運転日の気温や需要に応じて異なりますが、図4、5に11月の一例を示します。8時から18時まではMGTで発生した排ガスから熱が回収され、棟内の給湯、暖房に利用されます。このとき、一部の熱は蓄熱装置とロッカースペースのパネルヒーターに供給され、蓄熱材の融解と暖房が同時に行われます(図4で負の熱出力は熱入力を示します)。 MGT停止後の18時過ぎから19時過ぎまでは、第1の放熱動作として、蓄熱装置からパネルヒーターへ熱が供給されます。この放熱の過程で蓄熱材は過冷却され、翌朝まで液相のまま保持されます。 翌朝4時から5時には、図3の蓄熱槽底部にある発核部への水循環で、蓄熱カプセルの底部に結晶核が発生し、結晶が上方に成長して各カプセル内のスレイトールが凝固を開始し、温度が融点近くに回復します。そして、6時から8時前までは、第2の放熱動作として、蓄熱装置からパネルヒーターへ再び熱が供給されます。 このように蓄熱材の過冷却を利用することで、朝夕2度の放熱動作を効率的に実施し、かつ暖房が不要となる夜間の蓄熱装置から周囲環境への熱損失を抑制して、図5のように蓄熱動作終了時に保持していた高温の熱の90 %を暖房に利用することができます。
今後の展望この蓄熱装置を汎用化するためには、夜間、とくに土曜、日曜を挟んだ週末の過冷却状態を、計画的に保持するための工夫と制御の最適化が必要です。21世紀のエネルギー利用は、貯蔵技術が重要な鍵の1つになると言われています。今後も種々の対象、温度域に応じた蓄熱装置の実用化を目指した研究開発を実施する予定です。 エネルギー技術研究部門 |
参考文献
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