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水素ガスバリア性の高い複合材料を開発

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航空機・ロケット・車用の水素タンクに応用が可能

蛯名 武雄の写真蛯名 武雄 えびな たけお
蛯名連絡先
コンパクト化学プロセス研究センター
材料プロセッシングチーム長
(東北センター)

日本は現在もエンジニアリングプラスチックに匹敵する量の粘土の産出を続けています。この豊かな資源を生かし、新規用途を開拓し、低炭素社会に寄与したいと考えています。今回使われている粘土膜の原料は山形産で、人体にも安全な材料です。また、水を乾燥させるために60 ℃で加熱しているだけで焼成は行っていません。このように安全・安心な天然鉱物の有効利用を、これからも提案したいと思っています。

軽い水素タンクへの期待

 現在、航空機などにおいて炭素繊維強化プラスチック(CFRP)をはじめとする複合材料は強度の点で優れるため、軽量化の有効な手段となっています。航空機用液体水素タンクについて、複合材料の応用が期待されていますが、そのままでは水素の封止性能が不十分です。アルミニウム容器をコアにしたタンクは水素の封止性能に優れており、高圧に耐えるものの耐久性に課題があります。また、燃料電池自動車の実用化には車載用の軽い水素タンクの開発が急務です。水素輸送の際の漏洩量を少なくする技術も求められています。

 一方、宇宙開発の輸送コストを大幅に下げるには、使い捨て型より再使用型の宇宙輸送システムが望ましく、そのためには機体構造、とくに機体の容積の大半を占める液体水素燃料タンクの軽量化が重要です。

粘土膜と炭素繊維強化プラスチック複合材料を積層

 今回開発した複合材料は、炭素繊維の織物に樹脂を含浸させた「プリプレグ」と呼ばれるものと、産総研が開発した水素ガスバリア性に優れた粘土膜「クレーストClaist®」を重ね合わせ、加熱、加圧のサンドイッチ成型(ホットプレス)により得ました(図1)。プリプレグを片側3枚ずつ積層し、その間にクレーストを挟みこみ、ホットプレスすることで厚さおよそ1 mmの板状の試験体を得ました。この試験体の水素ガスバリア性を7気圧の水素を用いたガスクロマトグラフ法で測定したところ、これまでの材料と比較して水素ガスバリア性が100倍以上あることがわかりました。これは長さ5 m、直径1 m、圧力50気圧の水素タンクにおいてリーク量が年0.01 %に相当します。

 断面を観察すると、CFRPに含まれるエポキシ樹脂がCFRP表面とクレーストの隙間に食い込んで、機械的にしっかりした結合をして良好に接着していることがわかります(図2)。

 材料の耐久性試験として、1万回繰り返しひずみを与えたり、−196 ℃の極低温に100回さらした後でも、水素ガスバリア性がほとんど低減しないことを確認しました。この結果は、極低温・高圧力で用いられる水素タンクの部材として本複合材料が有望であることを示しています。

 この複合材料は、貯蔵容器の軽量化が一層求められるような自動車用水素ガスタンクや燃料電池容器、可搬式の液体水素貯蔵設備などへの幅広い適用が可能です。また、長期間にわたって水素貯蔵部からの漏洩量を低減させることによって、水素ガスのロスを低減させることができます。省エネルギーにもつながり、低炭素社会の実現に寄与できると期待しています。

図1 図1 複合材料の成形方法

図2
図2 複合材料断面写真

今後の展開

 今後さらに広範な性能評価試験を行うと同時に、タンクを成形し、その性能試験を行い、各種用途への適合性を検討する予定です。さまざまな使用環境や厳しい設計条件において安全性に直結する水素ガス漏洩の防止、品質のバラツキが少ない低コスト製造方法の確立を目指すことが、実用化にあたっての主要な課題です。


関連情報:
  • 共同研究者
    米本 浩一(国立大学法人 九州工業大学 大学院 工学研究院 機械知能工学研究系 宇宙工学部門)、奥山 圭一(独立行政法人 国立高等専門学校機構 津山工業高等専門学校電子制御工学科)
  • 参考文献
    K.Yonemoto et al. SAMPE '08, May 18−22 (2008).
  • プレス発表
    2008年5月16日「水素ガスバリア性の高い粘土膜プラスチック複合材料を開発

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