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レアメタル

希土類:資源調査および資源開発


はじめに

 レアメタルの需要は、ほかの金属と同様に年々増加の一途をたどっています。よく「石油の寿命はあと30年」と言われていましたが、その寿命は縮まることなく維持されてきました。これは石油鉱床を新たに発見し、開発・生産するという努力が行われてきた結果です。レアメタルに関しても同様で、レアメタルの寿命を伸ばすために不休の努力が続けられています。しかし30年前の資源の消費量と現在の消費量は全く違います。そのため過去と同じ年数の資源量を確保することは大変な困難を伴い、資源を探査・開発する点で大きなブレークスルーやイノベーションを必要とします。

 希土類[1]を例にとると、1900年から2006年までに全世界で消費された資源量は220万 tですが、その消費量は年々増加しており、今後30年間の需要は800〜1,000万 tと見込まれます(グラフ)。したがって30年の希土類寿命を維持するためには、過去100年あまりの間に消費された資源量の4〜5倍の埋蔵量を確保する必要があります。

 希土類は消費国や生産国が特定の国に偏っているため、世界的にはあまり注目を浴びず、それらをターゲットとした資源量調査や鉱床探査・開発はこれまで活発に行われてきませんでした。しかし、日本が中国に次いで世界第2の希土類消費国となっていることもあり、私たちの鉱物資源研究グループでは、日本の先端産業に必要不可欠な希土類の資源量調査を2005年から行っています。

グラフ

希土類元素の生産量と将来の需要。生産量は米国地質調査所の資料に基づく(http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/rare_earths/stat/)。赤線は、生産量がこれまでの伸び率と同様に将来も伸びた場合、青線は最近10年間の伸び率(1.7倍)が今後30年間継続した場合の需要を示す。

希土類資源量調査

写真1

写真1 中国バヤンオボー:世界最大の希土類鉱山。鉱石埋蔵量は鉱量約5,700万 t、酸化希土類品位6 %。

 希土類はランタノイド系列の15元素とスカンジウム、イットリウムを加えた17元素の総称です。これまでに公表されている希土類埋蔵量(経済的に開発可能な資源量)はこれらすべての元素を一括して取り扱っています。しかし、それぞれの元素の存在割合は鉱床により異なり、例えば希土類磁石に用いられるネオジムやジスプロシウムがどこにどのくらい埋蔵量として存在するのかといった詳細なデータベースはありませんでした。

 私たちはこのデータベースを作ることから始めました。希土類鉱山の多くは元素ごとの詳細なデータを公表していないため(もしくはデータを持っていないため)、文献調査だけでは精度良いデータベースを構築することはできません。そのため、世界最大の希土類生産国である中国(写真1)を初めとして、アフリカから南米まで世界各地の鉱床を鉱石試料採取のために調査と独自の化学分析を行い、データを創り出しました。その結果、(1)世界には約900万 tの希土類埋蔵量があること(そのうち中国の埋蔵量が約半分)、(2)ジスプロシウムやテルビウムなどの重希土類の埋蔵量はきわめて限られることなどが判明しています。この希土類埋蔵量は今後30年間の世界の予想需要量に相当します。

新たな希土類供給源の模索

写真2

写真2 南アフリカ地球科学審議会のRamontja CEO (写真左)、Foya鉱物資源開発部長(右)と筆者(中央)。

 希土類の中でも需要が逼迫(ひっぱく)して価格の上昇が続いている重希土類(ジスプロシウムやテルビウムなど)の新たな供給源の開発は重要なテーマです。現在、重希土類は中国南部の花崗岩風化型の鉱床から供給されています。このタイプの鉱床はこれまでのところ中国でしか発見されていません。私たちはこのタイプの鉱床の成因研究を行い、鉱床形成には(1)重希土類に富む還元型花崗岩の存在、(2)厚い風化殻を形成する高温多湿の気候、(3)重希土類を含有する鉱物が分解する環境、の3条件が必要であることがわかりました。日本学術振興会から科学研究費補助金を得て、東京大学や九州大学とともに、これらの条件を満たしている地域の花崗岩風化殻の調査を行っており、東南アジアで有望地を発見しています[2]

 一般に資源の探査から開発までには10年あまりの長い期間と膨大な開発資金が必要です[3]。また新たな鉱山開発は環境負荷を伴います。重希土類の供給を経済的に迅速に行うために、また環境負荷を最小限にとどめるために、既に開発中の鉱床からベースメタルや非金属鉱物の副産物として希土類を回収する可能性も検討しています。

 1つの候補は農業用肥料の原料である燐灰石です。世界の主要な燐灰石鉱床の鉱石を集め希土類の含有量を測定したところ、世界で年間に生産されている燐灰石中には約17万 tもの希土類(酸化物換算)が含まれていることが判明しました。この量は2006年の世界の希土類年間生産量(=消費量)である13万 tを上回ります。燐灰石から燐酸を製造する過程で希土類の回収を行えば、希土類の供給を大幅に増加させることが可能です。

 また日本の層状マンガン鉱床の鉄マンガン鉱石中には重希土類に富むものの存在が知られていました[4]。鉄マンガン鉱石中の総希土類(平均1800 ppm)中の重希土類元素の割合は約20 %であり、希土類鉱床の中では重希土類に富むことを特徴としています。残念ながら日本のマンガン鉱床は、規模が小さくすべて終掘しているのでここから希土類を回収することはできません。現在の課題は、希土類に富む規模の大きな層状マンガン鉱床を探し出すことです。産総研は2007年11月に南アフリカ共和国地球科学審議会、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構とともに南アフリカ共和国でのレアメタル資源に関する共同研究を実施することに調印しました。まず手始めに世界最大の規模を誇るカラハリ地域の層状マンガン鉱床の希土類ポテンシャル調査を行っています(写真2)。

希土類資源開発に向けて

 希土類資源を開発するためには、資源の基礎的調査や研究をするだけではなく、開発・生産のための選鉱試験や経済性の調査も必要です。2008年度に経済産業省は12.4億円の予算で「希少金属資源開発推進基盤事業」を開始しました。このプロジェクトでは、鉱物資源賦存のポテンシャルが期待されるものの十分な探査活動がなされていないアフリカ、中央アジア、環太平洋地域などの資源戦略上の重点国をターゲットに、最新の鉱床地質学の成果なども活用しつつ、資源国との関係強化を図り、日本の権益確保を促進しようとするものです。この中では新しいタイプのレアメタル鉱床や残渣(ざんさ)中の未回収レアメタルに対応した新精錬技術・回収技術の調査検討も行うことになっています。

 私たちは、このプロジェクトを主体的に実施する独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と連携して、新規調査地域や対象の提案をしていきたいと考えています。

地圏資源環境研究部門
渡辺 寧


参考文献

[1] 渡辺 寧,精密工学会誌,vol. 74, No. 1, p. 25-27 (2008).
[2] 渡辺 寧,JEITA Review, Vol. 561, p, 2-7 (2008).
[3] レアメタル−技術開発で供給不安に備える−、独立行政法人産業技術総合研究所レアメタルタスクフォース編、工業調査会,208p (2007).
[4] Kato, Y., Fujinaga, K., Nozaki, T., Osawa, H., Nakamura, K. and Ono, R., Resource Geology, v. 55, No. 4, 191-310 (2005).

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