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無機バインダー技術

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セラミックス製造プロセスにおける環境負荷低減を目指して

長岡 孝明の写真長岡 孝明 ながおか たかあき
長岡連絡先
先進製造プロセス研究部門
先進焼結技術研究グループ 主任研究員
(中部センター)
名古屋工業技術試験所(現中部センター)に入所以来、構造用セラミックスの製造プロセスに関する研究開発に従事してきました。産総研が発足してからは、無機バインダー技術に関する研究開発に従事し、材料の探索、各種成形法への適用および組織制御に取り組んでいます。

無機バインダーとは

 原料粒子を焼き固めて作製するセラミックスでは、まず所定の形をした粒子集合体(成形体)を作製します。この時、粒子どうしをつなぎ合わせる「接着剤」としてバインダーを使用します。バインダーには、成形体の自重程度では変形しない「保形性」と、大きな外力では変形する「流動性」の2つの特性を持つことが求められます。有機バインダーはこれらの特性を持っており、セラミックス製造には不可欠な材料です。しかし、この有機バインダーの除去には、焼き固める過程で多量の熱エネルギーを必要とすることや、二酸化炭素の排出、セラミックス内への灰分や炭素分の残留といった問題があります。

 こうした問題を解決するために、無機材料からなるバインダーの開発を進めています。無機バインダーは、主として水との相互作用で接着剤としての機能を発揮し、加熱すると脱水してセラミックス化します。無機バインダーの最も有力な材料は、セメントに代表される水硬性材料です。しかし、いままで水硬性材料は保形性しか注目されず、スラリー状の原料粒子を型に流し込んで硬化させる成形方法に限定されていました。そこで、流動性も併せ持つ無機バインダーの開発が期待されます。

流動性が付与された無機バインダーの開発

 保形性と流動性を併せ持つ無機バインダーを開発するために、材料を探索し水和反応を検討した結果、セラミックスの中で産業用として最も幅広く使用されているα−アルミナ(Al2O3)の中間生成物であるρ−アルミナ(Al2O3・nH2O, n≑0.5)が、水和反応の過程で優れた保形性とともに流動性を示すことを見出しました。そして、このρ−アルミナは、セラミックス原料粒子に水とともに少量添加することで保形性と流動性が付与できることから、無機バインダーとしての可能性が明らかになりました[1]

 写真は、この無機バインダーを添加したアルミナ粒子を押出し成形したものです。従来の有機バインダーを添加した場合と同様に、棒状や管状の成形体を作製することができます。さらに、これらの成形体を焼成すると、無機バインダー自身もα−アルミナとなるため、アルミナのみからなるセラミックスが得られます。最近、私たちは、ρ−アルミナ以外にも保形性と流動性をもつ水硬性材料を見出しています。

 現在、保形性と流動性が同時に発現する無機バインダーの効果の解明も行っています。粒子間に働く力を原子間力顕微鏡で調べると、ρ−アルミナは、粒子間に粒子どうしの凝集に反発する力や摩擦を減らそうとする力を持つことが明らかになりました。これらの力は、粒子間であたかも潤滑剤のように作用して、成形体の保形性と流動性の発現に大きく関与していると考えられます。

開発した無機バインダーを添加して押出し成形と焼成をしたアルミナセラミックスの写真

開発した無機バインダーを添加して押出し成形と焼成をしたアルミナセラミックス

今後の展開

 今後は、さまざまな材料の成形体に保形性と流動性を付与する技術の開発を行い、有機バインダーの使用を減らすことで、セラミックス製造プロセスにおける環境負荷の低減に役立てたいと考えています。


関連情報:
  • 共同研究者
    Cihangir Duran (産総研招へい研究員。現Gebze工科大学)
  • 参考文献
    [1]"Hydraulic alumina binder for extrusion of alumina ceramics", Journal of the American Ceramic Society Vol.90, No.12, pp.3998-4001, 2007.
  • この研究の一部は、産総研と日本ガイシ(株)との共同研究「低環境負荷プロセスの研究開発」で行われました。

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