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本格研究 理念から実践へ
多品種少量微細製造に関する本格研究
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小さな製品は小さな装置で


前田 龍太郎の写真

微細加工の研究開発が表向きの専門です。微細加工は道具立てが高価で、ノウハウも多いため装置維持管理費用の捻出やテクニカルスタッフ育成が、本業になっています。デスクトップ微細製造装置開発は本業の苦労を減らすための手段と期待しています。これがベンチャーの創業につながってしまったために苦労の総量は減っていません。

前田 龍太郎(まえだ りゅうたろう)
先進製造プロセス研究部門
主幹研究員


微細製造とは

 MEMSやナノ製造が次世代の製造技術として注目されています。MEMSとはMicro Electro Mechanical Systemsの略で半導体製造に用いられる微細加工技術を用いて、マイクロメートルサイズの機械素子を製造する手法です。微小な機械素子を電子回路とマイクロメートルサイズで一括して製造することにより、細胞の操作や微小な光のハンドリング、きわめて感度の高いセンサなどの開発が可能となりました。自動車衝突を瞬時に判断してエアバッグを膨らますためのセンサや、微細な穴からインクを噴出して印刷を行うインクジェットプリンタのヘッドなどがすでに実用化されました。最近になってさらに携帯機器の入出力を行うためのセンサ類や、携帯電話から画像を投影するプロジェクタなどのデバイスが市場をにぎわせています。MEMSにさらにナノテクノロジーを融合させた技術は、まさにユビキタス時代の新しい製造技術として注目を集めています。

微細製造ビジネス化の難しいところ

 このように微細製造は次の時代の製造技術として期待されていますが、基礎研究の結果をビジネスにつなげることは簡単ではありません。その理由のひとつには製造装置があまりに大型で高価になってしまったことがあります。超微細な加工(ナノ製造)は、これまで大きなクリーンルーム内で、数10億円もする巨大な装置により行われてきました。そのためにさまざまな種類の製品を個人の好みによりカスタマイズして生産する(多品種少量生産)には向かないのです。

 そこで私たちはナノ製造を机の上に乗る小さな工場(デスクトップナノファクトリ)で行おうと考えました(図1)。これまで使われてきた半導体製造装置は大型かつ高価であり、決められた部品を大量生産することに向いていますが、多くの応用デバイスを研究開発するのには向いていないためです。机の上に乗るくらいのデスクトップ化した製造設備であれば、多品種少量生産にも向いていますし、省エネルギー、省スペース、省資源にも対応ができます。これが実現すれば、装置の小回りが利きますので、いろいろな応用デバイスの試作が容易になり、デバイスの開発期間の短縮化が期待できます。また装置の購入費とランニングコスト(装置を運用、維持する費用)や人件費を大きく削減することが可能となります。特に大規模な空調を前提とするクリーンルームを準備しなくてよいことは、大変な利点となります。

図1

図1 デスクトップナノファクトリの概念図

小さな工場は大きな工場をそのまま縮めればいいか?

 このようなコンセプトを生かした装置開発の手はじめとして、大本の微細な形状(マスターパターン)を作成するためのリソグラフィ装置とマスターパターンの複製を多数製作するための装置(ナノインプリント装置)を試作しました。

 マスターパターンはおおむね1 mmの100分の1以下の微細な形状を描画する必要があります。小さいものを見るのに、レンズで拡大して見るのと同様に、小さいものを製作するには光を使った縮小法が有効です。レンズの投影の原理を使って画像を縮小する方法です。この方法によりマイクロメートル単位の加工ができます。この方法で微細なパターンを得ようとすると紫外線レーザーや極紫外線光源といった、大掛かりな装置が必要になり、低コストで製作することは困難となってきます。そこで私たちは光よりさらに高い解像度を期待できる電子線露光を利用したマスターパターン形成装置(図2)を開発しました。

図2

図2 小型電子線描画装置のプロトタイプと描画例

 一方、マスターパターンの複製を製造する技術として、ナノインプリント法を採用しました。この方法は樹脂材料を加熱して軟化させ、マスターパターンを押し当てることにより、複製を製造する技術で、ナノレベルのパターンを単純な方法で複写することができます。図3にデスクトップサイズのナノインプリント装置を示します。これらの装置開発は、産総研と技術力の高い中小企業との連携が役に立ちました。

 デスクトップの装置を実現するには、ただ単に装置のパーツを単純に縮小すれば良いと考えられるかもしれません。ところが、装置機能は小型化しにくいものがあります。例えばガス処理設備や配管、液体を使う洗浄プロセスなどです。装置は簡単に小さくすることができても、排ガスを無害化するガス処理装置を小さくすることはできません。同様に純水製造設備や洗浄ラインは大幅に小さくすることは困難です。そこで、デバイスの製作プロセスも通常とは変更し、小型化に向かないプロセスを極力排除したものにする必要があります。ナノインプリント法を複製パターンの製造法として採用する理由もそこにあります。通常用いられている製造法では、酸やアルカリで微細構造を溶解したり、反応性のあるガスをイオン化して微細構造を削り出すエッチング法が多用されます。これらの方法では、装置はガスの取り回しや液体類の配管を小さくすることは困難ですが、ナノインプリント法では、エッチングとは原理が異なることからこれらの問題が回避できます。

図3

図3 デスクトップナノインプリント装置

言い古されたことば、「新しい酒は新しい革袋に」

 現在メモリに代表される半導体製造で、日本は劣勢に立たされていると言われています。このような大量少品種の分野では後進に道を譲るとしても、次の時代の製造技術はぜひ世界をリードしたいものです。次世代の少量多品種のキーデバイス製造では、デスクトップナノファクトリをはじめとする新しいアプローチで臨むことが産総研の責務と考えています。


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