調光ガラス
透過する光の強さを調節できる「調光ガラス」は、近年の環境問題意識の高まりとともに、その需要が増しています。例えば、自動車や建築物の窓としては、日差しの強い夏に透過光を弱めて冷房効果を高めることなどが期待されています。
調光ガラスに利用する技術として、電気入力による酸化還元反応によって材料の色を制御するエレクトロクロミズムが知られています。現在は酸化タングステンが利用されていますが、色変化が青−透明に限られること、柄などの表現が困難なこと、材料・製造工程がともに高価なことなどから普及には至っていません。
同様の現象を示す材料として、プルシアンブルーという金属錯体顔料があります。これは1704年に発明された青色の顔料で、葛飾北斎が利用するなど、長い歴史があります。プルシアンブルーのエレクトロクロミズムは1978年に発見され、調光ガラスへの応用も検討されてきました。
![]() プルシアンブルーおよびその類似体による三原色インクとその混合による多色の実現 |
プルシアンブルー類似体の利用とナノ粒子化による色・柄の実現
私たちは、プルシアンブルーに含まれる鉄の一部を他の金属に置換した類似体では、金属の種類に応じて多様な色を示し、それらも電気的に透明に変化させられることを明らかにしました。また、混合・攪拌といった簡単な方法で、プルシアンブルーとその類似体のナノ粒子を作製し、それらを各種溶媒に分散させることでインク化に成功しました。
プルシアンブルーを用いると青色のインクが作製できます。ニッケルを含む類似体からは黄色、コバルトを含む類似体からは赤色を呈するインクができます。これらのインクを混合すると、多彩な色のプルシアンブルー型錯体のインクを作製できます。
これらのインクを用いると塗布法による製膜や、印刷法によるパターニングができます。導電性を持つ基板に塗布すれば、通電することで有色−無色透明の色変化が起こります。このインクを塗布した透明導電性基板2枚のすき間に電解液を閉じこめると、調光ガラスができます。この方法を用いると、材料の合成から調光ガラスの製造まで簡便かつ安価に実施できます。この調光ガラスは1.5 Vの乾電池によって、10秒以内に青から無色透明への色変化が起こります。電流は色を変化させる時にだけ必要であり、通電を止めても状態は保持されます。また、逆の電圧をかけると、逆の色変化が起こり、1万回以上の色変化にも耐えられます。現在、さまざまな色のエレクトロクロミック素子の開発も進んでいます。
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10 cm角の調光ガラス試作品(左:消色状態 右:着色状態) |
今後の展開
さらに多様な色や柄を実現し、家庭や自動車に利用できるサイズの調光ガラスを安定的に動作させるための要素技術を研究開発して、近い将来のサンプル出荷を目指しています。


