なぜNOxセンサが必要か
自動車の燃費向上によるCO2の排出削減のため、ガソリンエンジン車では、希薄燃焼(リーンバーン)技術の開発が精力的に行われています。しかし、リーンバーンでは、CO2は低減するもののNOxの排出量が増加します。また、排ガスの酸素濃度が高いため従来の三元触媒が有効に機能せず、NOx吸蔵還元触媒を必要とします。この触媒はNOx吸蔵能を定期的に回復させる必要があり、そのタイミングを厳密に制御することが燃費向上や環境対策の鍵となります。そこで、車載可能で微量のNOxを検出できるセンサの開発が求められています。また、ディーゼルエンジン車では、NOxと未燃カーボン(粒子状物質:PM)の排出がトレードオフの関係にあり、NOxの排出量を抑制するとPMの排出量が増加するため、NOxセンサを使った燃焼制御が望まれています。
自動車用のNOxセンサには、エンジン排ガス中という過酷な環境での耐久性・耐熱性などが要求され、その対策として固体電解質セラミックス(酸素イオン伝導体)を用いたセンサが開発されています。しかし、車載可能な小型の高感度センサの開発は難しく、自動車排ガスの浄化と燃費向上を進める上での課題となっています。
低温作動可能な混成電位型NOxセンサ
私たちは、NOxを検知する電極のナノ構造を精緻に制御し、高感度なNOx検出特性を低温で実現する、新型NOxセンサを開発しました。このセンサは、電気化学セル構造の改良により、NOx分子に対する検出の応答速度が従来の約5倍、検出感度が約2倍向上しました。
今回、レーザーデポジション法*により、高酸素イオン導電性セラミックスであるスカンジア安定化ジルコニアなどをSiO2基板上に堆積してセンサ構造としました。作成したセンサは1cm×2.5mm×300nm程度の1室型電気化学セルで、300℃以下の温度でもNO分子に対して高い検出能力と応答速度を示し、これまで不可能と考えられていた混成電位型センサの低温での適用の可能性が見出されています。
このセルは、5%の酸素を含む窒素で希釈した1000ppmのNOガスに対して、350℃で約100mVの起電力の変化を示し、検出困難なNOガスに対して世界最高レベルの検出特性を示しました。さらに、検出電極の微細構造の最適化により、その応答速度は90%応答で2秒以下と非常に敏速です。
現在、開発が盛んに進められている多室型の限界電流式センサは、比較的精度の高い検出は可能ですが、検出電流値が非常に低いためにシステムが複雑で高価になります。また、触媒性能監視用として必須条件である100ppm以下のNOxの検出が困難です。これに対して、今回開発したセンサは、低温で微量のNOxを単純な構造で検出することができます。
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開発したNOxセンサ |
今後の展開
高感度センサを用いたエンジン燃焼の制御によって、ディーゼル車などのNOx排出量を低減し、燃費を向上させることが可能となり、大気環境保全およびCO2の排出削減に貢献することが期待されます。
今後は、さらにNOx検出感度と応答速度の向上を目指したセル構造の開発を進めます。また、耐久性や共存ガスの影響などを評価して、実用化の検討を進めていく予定です。

濱本 孝一 はまもと こういち