安全で楽しい遊具のデザイン
遊具による事故が多発し、公園から撤去される遊具が増加しています。その結果、将来を担う子どもたちが、思いきり遊んで豊かな経験を積む場所が減少することは、子どもの成長の機会を奪うことにもなります。また、事故原因を解明し知識化することで将来の遊具づくりに活かさなければ、子どもの遊び場をつくる技術が蓄積されません。さらに、資産価値の損失に、撤去費用や廃棄費用まで加わって、多額の経済損失にもつながります。
撤去すべき遊具があるのも事実ですが、改善すれば安全性を確保できる遊具も数多くあります。産総研は、子どもの事故予防工学カウンシル(CIPEC)という研究グループをつくり、子どもの事故予防に関する研究を進めてきました。遊具プロジェクトは、その一環として進めてきたもので、医師、保育士、遊具メーカ、保護者、認知科学や機械工学の専門家などに参加してもらい、複眼的な観点から、安全で楽しい遊具のデザインを目指しています。
遊具で遊んでいる子どもの行動理解
安全で楽しい遊具づくりのヒントを見つけるために調査した川和保育園では、園児が遊んでいるときに発生する小さなけがを把握し、遊具の改良を続けていました。できる限り子どもたちを自由に遊ばせて、その遊びのなかで、子どもたち自らがチャレンジと失敗を繰り返しながら危険を学んでいく環境を構築するには、大人が、あらかじめ遊具のどこに危険があるのか、子どもたちはその危険をどの程度把握できるのかを知った上で、遊具をデザインすることが不可欠です。
保育園には、石崖を登るとログハウスに到達できる、人気の遊具があります。石崖は、30cm角の石が不規則に積み上げられています。園児たちは、自分の身体特性に合った手がかりや足がかりを探しながら、登ります。
私たちは、この遊具で遊ぶ子どもの筋力を計測する行動観察システムを開発しました。画像情報・位置情報・筋力情報を同時に記録します。画像情報は、USBカメラで記録し、位置情報と筋力情報の収集には、超音波式位置計測センサと筋電センサを使いました。石崖ログハウスの近くに超音波受信機を27個取り付け、小型の超音波発振機を園児の衣服に装着して、遊んでいる子どもの位置をcm単位で計測しました。また、子どもの右腕に、ウェアラブル筋電センサ(筋力を計測するセンサ)を装着し、無線通信で、遊んでいる最中の筋力の情報を計測しました。さらに、遊具付近にカメラを取り付け、画像情報を記録しました。位置情報と筋電情報を組み合わせると、園児たちが、遊具のどの位置でどの程度の筋力を使っていたかを可視化することができます。
科学的根拠に基づく遊具づくり
今回得た知見をもとに、新しい遊具を試作しました。あらかじめ、小型モデルでシナリオを作成し、最悪のケースでも大きなけがにはならないような工夫を検討しました。
登り部分では、4歳から6歳の子どもにあった手がかり・足がかりを考案し、(1)対象としない低年齢の子どもが容易に登れないようにする工夫、(2)対象とする年齢(4歳から6歳)では、大きな力を必要とする(転落の危険がある)箇所を地面から低い高さにする工夫、(3)登りきる部分では確実に登りきらせる工夫をしました。さらに、転落箇所全部を砂場(深さ20cm以上確保)にしました。
実際に子どもたちに使ってもらって改善するために、保育園の協力を得て、今年2月に桑の実保育園に新しい遊具を設置しました。その結果は、子どもの行動観察とそこから導き出された知見を活かすことで「危険や難易度が制御された遊具のデザイン」が可能なことを示しています。プロジェクトでは、引き続き、この遊具の安全性の検証を進める計画です。
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登り部分を工夫した新しい遊具の製作と設置 |

西田 佳史 にしだ よしふみ