独立行政法人産業技術総合研究所
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安全を測る 構造体の健全性診断技術

加速器技術を用いた非破壊検査用小型X線源の開発

非破壊検査用小型X線源の必要性

 X線を用いた非破壊検査は、非接触で検査対象物の内部を見ることができることから、航空機の手荷物検査をはじめとしてさまざまな分野で利用されています。

 産業分野でも、以前から製品検査などに利用されてきましたが、それに加えて近年、工場や発電所のプラントの安全性を確保するためにX線による配管などの非破壊検査の重要性が高まってきています。

 プラント配管検査には、配管のサイズや肉厚に応じて最適なX線のエネルギーを選ぶ必要があります。また、検査対象物を動かすことができないため、X線源を移動させて検査を行わなければならず、狭い空間にX線源を入れなければならない場合も少なくありません。300キロ電子ボルト程度以下のエネルギーのX線源は小型で持ち運びの容易なものが市販されていますが、肉厚の配管検査(特にエルボー部・溶接部等の検査が必要な部分)などでは300キロ電子ボルトよりも高いエネルギーのX線源を必要とします。

 また、平成17年6月から施行された放射線障害防止法及び関係政省令等の改正で、橋梁などの非破壊検査では、比較的簡易な手続きで4メガ電子ボルト以下の直線加速装置を用いたX線源の移動使用が可能になりました。そのため、300キロ電子ボルト以上4メガ電子ボルト以下の小型で移動使用できるX線源のニーズが高まってきています。

 産総研では、これまで行ってきた電子加速器による高エネルギー電子ビーム発生技術の研究成果やノウハウを元に、このエネルギー領域の非破壊検査用小型X線源の開発を行っています。

小型電子加速器の開発

 通常の低エネルギーのX線発生装置は、直流の高電圧をかけて電子ビームを加速しターゲットに当ててX線を発生させますが、エネルギーが高くなると絶縁体のサイズを大きくしなければならず、X線源を小型にすることはできません。高エネルギー電子加速器では、この問題を解決するため多数の共振空洞(キャビティ)に高周波電力を供給してキャビティ内に生じる周期的な電界によって加速します。このキャビティのサイズと共振周波数は反比例の関係にあり、共振周波数を高くすれば小型の電子加速器が実現できます。

 しかし、周波数が高くなるほど技術的に難しくなります。産総研では、従来よりSバンド(2,856MHz)のマイクロ波を用いた電子加速器の研究を行ってきましたが、平成13年より、コンパクトで高エネルギー・高パルスレートの電子ビームの発生が可能な電子加速器を実現するためCバンド(5,712MHz)のマイクロ波を用いた電子線形加速器(リニアック)の研究を開始し、写真1のようなCバンド小型電子加速システムを開発しました。

写真1

写真1 Cバンド小型電子加速器システム
手前下部の円筒状のものが加速管、左奥がマイクロ波増幅管

 写真の電子加速器は、3メガ電子ボルト以上の電子ビームを発生でき、加速管本体のサイズは約35cmで、マイクロ波源や電源などを含めても1m×1m×1.5mにすべて収まり、台車で運ぶこともできます。また、市販されている小型電子加速器の多くはマイクロ波源としてマグネトロン管を用いていますが、マグネトロン管はそれ自身でマイクロ波発振するため複数の管を同期させたり出力を変えたりすることは難しく、エネルギーを変えることは容易ではありません。

 これに対して私たちが開発した加速器は、マイクロ波増幅管(クライストロン管)を用いており、出力を変えたり複数の管を同期させたりすることが容易で、さまざまなエネルギーに対応することができます。写真2は、この加速器で発生した電子ビームを真空窓を通してアルミナ板に入射したときの発光を示しており、設計どおり電子ビームを加速できていることを確認しました。

写真2

写真2 Cバンド小型電子加速器で発生した電子ビームによる発光

ポータブルなX線発生システムの開発

 前述の電子加速器は、台車などで移動させることが可能で、3メガ電子ボルト以上のX線を発生させることができることから橋梁などの大型構造物の非破壊検査には適していますが、工場や発電所内の配管などの小型の構造物の検査時に狭い場所に運んで使うにはまだ大きすぎます。

 そこで、Cバンドのマイクロ波よりもさらに周波数の高いXバンド(9.4GHz〜11.4GHz)のマイクロ波を用いた人間の手で持ち運びが容易な超小型電子加速器の開発も行っています。現在までに、マイクロ波源、加速管、パルス電源などの主要コンポーネントを製作しました。

 このような超小型電子加速器では、加速用マイクロ波発生部が最もサイズが大きく、これをいかに小さくするかが開発のキーポイントになります。私たちは、最大約35cmの大きさで片手で容易に持ち運ぶことができるマイクロ波発生部(マイクロ波増幅管及びそのドライバーユニット)を開発しました(写真3)。

 今後これらのコンポーネントをポータブルX線発生システムとして組み上げて、X線非破壊検査の実験を行う予定です。

写真3

写真3 Xバンド加速器用マイクロ波増幅管(手前)と増幅管のドライバーユニット(奥)

計測フロンティア研究部門
鈴木 良一


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