シリーズ連載にあたって
シリーズの第2回として国際協力機構(JICA)/NIMTプロジェクトで実施される「本邦研修」を取り上げ、プロジェクトの中での本邦研修の役割や、どのように計画され、どのように実行されていくかを紹介します。
プロジェクトの多様性
NIMTプロジェクトでは、タイ王国に放射線標準を除く計量標準と化学分析技術の42の技術移転、新庁舎建設後の標準・校正室の環境管理技術の移転を行いました。計量標準は、量子ホール抵抗標準のような最先端の電気標準のほかに、SI基本単位である長さ、時間、質量、温度、化学、測光標準と音響・振動標準も含め8分野の標準のほとんどが含まれています。
特にこのプロジェクトではタイ王国に一次標準を整備し、NIMTが独自にタイ王国内の校正機関や産業界に標準を供給できるようにすることが目標です。したがって、42の項目の中には高度な技術も含まれていて5年間という限られたプロジェクト期間内に世界最高精度に達することが難しい標準も含まれています。これらの標準については、標準を担当する職員(C/P)が技術移転終了後も自分自身で技術の向上を図り、当初目標を達成させることができるレベルまで研修を行いました。
このように全く異なった技術や指導方法を選択しながら一つのプロジェクトとしてまとめて、系統的に進めなくてはなりません。
技術移転の手順
プロジェクトは、まずタイ王国の経済や社会が必要とする計量標準の提案から始まりました。円借款によりNIMTが揃える機器の中には、一次標準のような特殊な機器が多く含まれているため、日本の計量標準機関が総がかりで標準機器を選定し、一般国際入札で調達を開始しました。
一方、NIMTのC/Pは、NIMTが設立された直後で、すべてが採用されていたわけではありません。プロジェクトの進行に合わせて、NIMTがC/Pとなる職員を雇用しながら本邦研修が始まったのです。それぞれの量目ごとに条件は異なりますが、産総研計量標準総合センター(NMIJ)でも一つの量目に携わる研究者は限られているほか、一次標準の技術移転は研究者が片手間でできる仕事ではなく、日本側の研究者、研究室にとっても大きな負担となります。
このように機器の整備、C/Pの確保、NMIJをはじめとする日本の計量標準機関の受入体制など周辺状況がすべて整って、初めて本邦研修が実施に移されます。
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2005年秋、4名の研修生(磁気、レーザ、光度、分光放射)とC/P |
NIMTプロジェクトの技術移転は、プロジェクトで立案したスキームに沿って実施されます。その最初の段階としてNIMTのC/Pを日本に招聘し、NMIJをはじめとする日本の計量標準機関で「本邦研修」を行います。当初計画では、標準確立技術の習得に必要な期間として3ヶ月間の本邦研修が設けられました。
本邦研修は、プロジェクト・フェーズ1開始前から始まり、これまでに計36人のC/Pに対して実施されました。プロジェクト・フェーズ2からは、プロジェクトの目標である国際認証の取得を達成するため、本邦研修を前倒しにして積極的に進めることとなり、研修期間が2005年度と2006年度に集中しました。C/Pの雇用も前倒しに進め、NIMTとNMIJの双方の関係者の努力により本邦研修が実現されました。
研修の計画と実施
研修期間内の日程は指導者とともに綿密に計画されます。量目によっては期間を短縮する場合もあります。また、様々な理由により1回の本邦研修で習熟が困難な場合には、NIMT自身の予算などの別途予算手当を行って追加の研修が計画される場合もあります。主担当機関はNMIJですが、量目により日本電気検定所(JEMIC)や日本品質保証機構(JQA)での本邦研修が実施されることもありました。日本のすべての計量標準機関の協力が本邦研修の大きな支えとなっています。
本邦研修では、それぞれの標準の基礎及び技術研修、標準の正確さ(不確かさ)の推定などに加え、国際認証を取得する際に不可欠な校正手順書の作成方法などを指導しました。また、必要に応じて、標準機メーカーでの実習、関連機器メーカーや公的検査・検定機関の訪問、学会や展示会への参加など、幅広い視点から技術の習得を進めていきます。また、技術マニュアルなどの品質システム整備も重要な研修課題となっています。量目によっては、タイ王国内の標準器が持ち込まれ、研修生立ち会いのもとに校正の実習が行われることもあります。



