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CIGS薄膜太陽電池の省資源製法
 [PDF:407.7KB
大面積で高効率な太陽電池の量産化に期待

石塚 尚吾の写真石塚 尚吾 いしづか しょうご
石塚 連絡先
太陽光発電研究センター
化合物薄膜チーム 研究員
(つくばセンター)
入所以来、基礎研究から産業応用までを見据えた幅広い視野でCIGS太陽電池の研究に取り組んでいます。オリジナリティーに富んだ次世代型太陽電池の新規創成や太陽光発電の本格的普及に向けた要素技術の開発を目指しています。

CIGS太陽電池

 現在、世界のエネルギー事情からみても、面積が小さくても十分な電力を生み出せる高効率の太陽電池に対する期待が高まっています。

 なかでもCu(In,Ga)Se2(CIGS)太陽電池は、
 (1)変換効率が高い
 (2)数µm以下の薄膜でも光を十分吸収できる
 (3)経年劣化が少なく長期信頼性に優れている
 (4)黒一色の落ち着いた色彩
などの優れた特長をもっています。

 このCIGS 薄膜の作製法には、代表的なものとしてセレン化法と多元蒸着法の2つがあります。セレン化法は、銅、インジウムなどの金属積層プリカーサ(前駆物質)をセレン系ガスの中で熱処理してCIGS薄膜を形成する方法です。これは、大面積膜のCIGS 太陽電池を作る技術として知られていますが、高い変換効率は得られません。一方、多元蒸着法は、銅、インジウム、セレンなどを蒸着する方法です。これは量産には不向きとされていますが、実験室レベルの小面積CIGS 太陽電池では高い変換効率を実現できる利点があります。

多元蒸着法の問題点

 多元蒸着法では、製膜の際に銅・インジウム・ガリウムといった金属原料と、その数10倍ものセレン原料を供給する必要があります。

 これは、通常の蒸気セレンがSe2、Se5、Se6、Se7、Se8といった比較的大きな分子で構成されているために反応性が低いことや、製膜には高温が必要で、せっかく作製された薄膜表面からセレンが再蒸発してしまうことなどが原因です。このため、ほとんどのセレンは製膜室の内壁などに付着堆積して産業廃棄物になり、またこの付着堆積物の除去や原料補充のために頻繁に製造装置のメンテナンスが必要です。そこで、高効率太陽電池が得られる多元蒸着法を大量生産に応用するには、セレンの制御性を高めた、利便性の高い製造技術の開発が望まれていました。

新しいCIGS薄膜作製技術

 産総研では、多元蒸着法においてセレン原料の制御性と利用効率を高めるため、これまでの蒸気セレンにかえて、高周波による気体放電で発生したプラズマにより気体分子を分解する方法(RFプラズマクラッキング)でラジカル化したセレンを用いてCIGS薄膜を作製する技術を開発しました。

 この技術によって、製膜時にセレンの供給を精密に制御できるようになり、さらにラジカルセレンの反応性が高いので、原料消費量をこれまでの蒸気セレンの10分の1 以下に抑えることに成功しました。(なお、セレン以外の金属原料はこれまで通り、るつぼ加熱による蒸発源を用いています。)

 また、今回開発したラジカルセレンを用いる方法で作製すると、滑らかで密な表面をもち、しかも大粒径のCIGS薄膜になることを見出しました。そして、この技術で作製したCIGS 薄膜の小面積太陽電池は、これまでの多元蒸着膜と同等の高い変換効率を示すことも確認しています。

今後の展開

 今回開発したラジカルセレンによる製膜技術の安定性や信頼性をさらに高め、大面積モジュール用CIGS 製膜への応用を検討するほか、太陽電池のさらなる効率化や低温製膜技術の開発などへの応用も検討していきます。

▶ 太陽電池構造の概略
太陽電池構造の概略図

ラジカルセレンを用いた多元蒸着法によるCIGS製膜イメージ図

▲ラジカルセレンを用いた多元蒸着法によるCIGS製膜イメージ


関連情報:
  • 参考文献
    「産総研TODAY」VoL.6 (2006)No.4 pp.22−23
  • 共同研究者
    仁木 栄、櫻井 啓一郎、山田 昭政、松原 浩司(産総研)
  • プレス発表
    2007年4月5日「非シリコン系太陽電池の省資源化製法を開発
  • この研究は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業、太陽光発電システム未来技術研究開発「大面積CIGS太陽電池の高性能化技術の研究開発(平成18〜22年度)」の支援を得て実施されています。
  • (注)薄膜太陽電池では最高の19.5%が米国再生可能エネルギー研究所により達成されています。

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