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超低エネルギーでのイオン注入でシリコンを低抵抗化
 [PDF:985.3KB
極浅接合によりシリコン半導体デバイスの高集積化

山本 和弘の写真山本 和弘 やまもと かずひろ
山本連絡先
計測フロンティア研究部門
活性種計測技術研究グループ 主任研究員
(つくばセンター)
この装置は薄膜堆積装置として開発したもので、当初は炭素薄膜の化学結合制御の研究を行っていましたが、超低エネルギーイオン注入がシリコン半導体の将来技術になると考えて研究を開始しました。半導体産業に用いられる実用装置を考えた場合、プロセスのスループットが重要ですが、この技術は大電流密度が得られますので、今後産業界との連携を推進して実用化研究を進めたいと考えています。

イオン注入の問題点

 シリコン半導体デバイスについて、将来的に解決しなければならない技術課題が「国際半導体技術ロードマップ」としてまとめられています。そこでは、素子の微細化にともなって、電気伝導制御のためのドーパント(半導体に加えられる不純物)を高濃度にし、より浅いソース/ドレイン接合を形成することが必要とされています。

 これまでの数MeV〜数十keVのイオンエネルギーを用いたイオン注入法(図1)では、シリコン結晶中に多量の格子欠陥および格子間原子がなだれ現象的に形成されるので、結晶性の回復と導入したドーパントの活性化のために、熱処理が必要になります。イオン注入エネルギーを数keVに下げても、熱処理によってドーパントの拡散がみられるので、ドーピング層が10nm以下の極浅領域を形成するためには、熱処理を行わない工程が必要です。特にp型ドーパントであるボロンは、結晶格子間距離に対して原子半径が小さくシリコン結晶格子中を拡散しやすいのです。そのため、急峻にボロンドープされた極浅接合の形成が重要な課題となっています。

図1

図1 従来のイオン注入(ボロン、シリコン)

超低エネルギーイオン注入

 産総研では、質量分離したイオンを1000eV以下の低エネルギーに制御し、イオン照射する際の高速中性粒子による損傷の抑制ができる超低エネルギーイオン照射装置を開発し、さまざまな応用を検討してきました。

 今回、電極を形成したシリコン単結晶ウェハー(100)面に、表面保護膜として1nmの厚さの酸化膜を形成し、質量分離したボロンイオン(原子質量11)を照射しました。イオンが残留ガスとの衝突により高速中性粒子になることを抑制するために、チャンバーの真空度を到達値で1.3×10−8Pa、イオン照射中でも6.0×10−7Paとしました。低エネルギーイオン照射によって、シリコン結晶の多量の格子欠陥および格子間原子の形成が抑制されます。それでも、少量の格子間原子が形成されますが、これはイオン照射中にシリコンを加熱してひずみを緩和することによって抑制されます。

 加熱温度はボロンの拡散が生じない800℃以下として、イオン照射後のシート抵抗を調べたところ、温度が高いほど抵抗は低下しました。これは高温でイオン照射した方がシリコン結晶中の欠陥を低減し、ボロンの活性化が高くなるためです。シリコン結晶を800℃に加熱して、イオン照射エネルギー依存性を調べたところ、イオンエネルギーが300eVの時に最も低い抵抗を示し、その値は2.8kΩ/□であり、移動度は87を示しました。イオンエネルギー500eVでイオン照射したシリコン試料のシート抵抗は3.0kΩ/□であり、2次イオン質量分析による深さ方向分析から、ボロン10は表面から1nmの領域のみに存在しています。

 一方、ボロン11はそれより1000倍の濃度で表面から深くまで侵入していますが、これは汚染ではなく、イオン注入により導入されたボロン11であることがわかります。ボロン注入量が最大値の10%になる深さをボロンの注入深さと規定すると、ボロン11の注入深さは8nmでした。500eV以下の超低エネルギーイオン注入によって、表面から10nm以下の領域にボロンを導入して、抵抗の低下を実現しました(図2)。

今後の予定

 今後、半導体製造装置メーカーとの連携を求めて、技術の最適化により実用技術として製造装置の形にしていくことを目指しています。

図2

図2 超低エネルギーイオン注入(ボロン、シリコン)


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