固体酸化物型燃料電池
燃料電池は燃料(水素)と空気(酸素)の化学反応から直接電気を取り出すことができ、小型でも高い効率を実現できます。地球温暖化の原因の1つと言われるCO2の発生の大幅な削減につながることから、種々の方式の電池が開発されています。その中で最も効率が高い燃料電池は、セラミックス技術を利用する固体酸化物型燃料電池(SOFC)です。
SOFCは他の燃料電池に比べて、高い温度領域で動作するので電池の排熱を燃料改質や貯湯に利用でき、システム全体の効率を大幅に向上できます。また、セラミック材料だけで燃料電池を作製できるので、高い長期安定性をもつのが特徴です。しかし、これまでのSOFCは800〜1000℃という高温での運転が必要なため、熱サイクルや負荷変動の少ない発電設備への応用などに限られていました。
マイクロSOFCキューブ
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクト「セラミックリアクター開発」では、13の研究機関、国内外の大学や企業が参加して、動作温度が650℃以下、高出力で急速運転ができる小型高性能SOFCの開発研究を行ってきており、これまでに高性能チューブ型マイクロセルの開発に成功しています。
小型高性能SOFCの実用化のためには、これらのチューブ型マイクロセルを高度集積して、スタック・モジュールにする必要があります。そのためには高い空気供給機能(多孔質体)と集電機能(低電気抵抗)の両方を満たす集積用構造体の開発が必要です。通常、導電性セラミックスは多孔化すると電気抵抗が増加するため、相反する2つの機能を両立させた構造体の作製は難しいのです。
産総研とファインセラミックス技術研究組合(FCRA)・日本特殊陶業は、市販のセラミック材料を利用しながら、セラミック電極構造制御技術やマイクロ集積モジュール作製に必要なセル接合技術などを検討して、その集積方法や集積用構造体の新しい製造方法を見いだし、これらの問題を解決しました。
今回、SOFCの空気側電極材料として使われているランタンコバルト系セラミックスを集積用構造体にも用いて、その微細構造制御を最適化することにより、600℃以下の低温動作でも1cm3あたり2W以上の出力をもつ超小型キューブ式SOFCユニットの製造技術を確立しました。この技術は、基本的なセラミック成型方法を利用しているので量産にも適しています。
作製したマイクロSOFCキューブは、角砂糖大の体積1cm3の内部に、直径が0.8〜2mmのチューブ型マイクロセルが集積された構造になっています(写真)。
東邦ガスが運転温度550℃において2mm径のチューブ型マイクロセルを内蔵するSOFCキューブで性能試験を行ったところ、2W以上の電力が得られることが実証されました。この結果は、600℃以下で運転した燃料電池としては単位体積あたりの特性が世界最高レベルであり、このユニットが燃料・空気の通路をもつ本格的な世界最小のマイクロキューブであることを示しています。
このマイクロSOFCキューブの方式を使えば、マイクロSOFCのスタック・モジュール化が容易になり、小型移動機器用電源の数10Wクラス(体積:数10cm3)から、自動車用補助電源、家庭用電源などに適用可能な数kWクラス(体積:数1000cm3)まで広く展開ができるようになり、SOFCの実用化を加速するものと考えています。
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写真 開発した角砂糖大のマイクロSOFCキューブ |

鈴木 俊男 すずき としお