ダイヤモンドの応用
ダイヤモンドは、高硬度、熱伝導率の大きさ、光透過波長帯の広さ、誘電率の小ささ、化学的安定性など有用な物性をもっているので、さまざまなデバイスへの応用が期待されています。特に半導体としての応用には大きな期待がもたれていますが、その実現にはダイヤモンドの優れた特性を活かせる単結晶ダイヤモンドウェハが必要となります。これまで、ウェハ状のダイヤモンドを製造するには大型のダイヤモンド単結晶を薄切りにしていましたが、加工ロスが多く、複雑なプロセスも必要なため、電子デバイスへの応用が考えられる段階ではありませんでした。
大型単結晶ダイヤモンド
ダイヤモンドは、炭素を高温高圧環境の特殊炉で製造する方法と、プラズマCVD(化学気相成長法)で作製する方法があります。産総研では、2003年からマイクロ波プラズマCVD法による大型単結晶ダイヤモンド合成の研究を進め、これまでに1カラットの単結晶ダイヤモンドの高速合成に成功しています[1]。
産総研で開発した製造法は、(100)面を成長面として成長を継続できる特徴があります。そこで、さらに大型のダイヤモンドをつくるため、最初に(100)面を持った種結晶を棒状に成長させ、次に側面のたとえば(010)面を研磨してこの面上に成長させ、さらに(100)面上に成長させることで、しだいに結晶を大型化することにも成功し、最大で厚さ10mm、重さ6.6カラットのダイヤモンドを合成しています。
ダイレクトウェハ化技術
今回、結晶表面の処理とエッチングによって、種結晶とその上に成長したダイヤモンドを加工ロスなしに分離する「ダイレクトウェハ化技術」を開発しました[2]。これは、結晶成長に先立って、種となる単結晶ダイヤモンドにあらかじめイオンを注入して、表面直下に欠陥層をつくっておきます。気相成長後、欠陥層がグラファイト構造になるので、電気化学的エッチングなどによってこのグラファイト部分を除去します。
この方法では、ごく一部の種結晶が切断時になくなりますが、その消耗は1µm以下に抑えることができます。したがって、種結晶を何度も繰り返して利用することができ、切り離したウェハを種結晶として使用することもできます(図)。
これまでにも、このような分離手法はいくつか研究されてきましたが、いずれも小さい形状に限られ、最大形状でも3〜4mm角が限界でした。産総研では、エッチング方法を改善して、10mm角(面積では10倍)の大型ウェハを実現することに成功しました(写真)。
今後の予定
今後、さらに種結晶の大面積化を進めるとともに、これに対応した均一で大面積なウェハ作製技術の開発を続けていきます。同時に結晶品質の向上も進め、ダイヤモンドのエレクトロニクス分野への応用を切り拓いていきたいと考えています。
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図 ダイレクトウェハ化技術 |
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写真 ダイレクトウェハ化技術で作製した大型単結晶ダイヤモンド・ウェハ |

杢野 由明 もくの よしあき
