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シリーズ:NIMTプロジェクト(第1回)

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タイ王国
国家計量標準機関(NIMT)の設立支援

計量標準総合センター 国際計量室 


シリーズ連載にあたって

 NIMTと言っても、聞き慣れない方がほとんどでしょう。産総研の計量標準総合センター(NMIJ)は国際協力銀行(JBIC)及び国際協力機構(JICA)と協力して、タイ王国の国家計量標準機関(NIMT)の設立を支援しています。このシリーズではその概要・経過・展望を紹介します。

背景

 タイ王国がメートル条約に加盟したのは1912年でした。1997年には第8次国家経済社会開発プログラムの一環として国家計量開発法が制定され、これに基づき1998年6月1日にNIMTが創設され、タイ国内の計量標準機関から標準機器を移管し1999年1月から仮庁舎で校正サービスを開始すると共に、国家計量標準機関としての本格的な整備事業を開始しました。

 これを受け、タイ政府は日本政府に対して計量標準の維持・供給施設の建設・標準機器整備のための円借款有償資金協力を要請し、1999年と2000年に分け人材育成の協力を含む円借款契約が締結されました。この合意を基に、1999年から通商産業省知的基盤課、計量研究所、日本電気計器検定所、日本品質保証機構、化学物質評価研究機構が連携し、タイ政府に対してNIMTの施設および標準機器の整備、人材育成などに関する技術移転プログラムを提案し、同国における計量標準の整備事業を推進するための基本計画の策定に協力しました。その後JICAによる事前調査が2回にわたり行われ策定されたJICA/NIMTプロジェクトを実施するために、産総研・計量標準総合センター・国際計量室がわが国の支援母体として事務局を務めています。

 このプロジェクトでは、2002年10月から5ヵ年の計画で、放射線標準を除く全分野を対象に、特に計量標準として重要な42の量目をタイ王国に整備することになっています。

写真1

写真1 2006年8月に新庁舎の落成式典が行われた

プロジェクトの概要

 発展途上国の国家計量標準機関(NMI)の整備は、技術支援に加え、しっかりした財政的支援と、継続的な人材育成が成功の重要な三要素です。このプロジェクトでは財政支援として、新庁舎整備に約15億円、標準機器整備に約15億円、加えてタイ国内資金10億円の総額40億円規模の予算を確保して進められています。

 新庁舎整備に際しては、熱帯地域に国家計量標準機関を実現することを命題として、標準機器を整備する各ラボの環境条件(設定温度、温度の安定性、設定湿度、湿度の安定姓、振動等)を含む施設の仕様を詳細に作成しNIMTに提案しました。このデータを基に、基本設計を受注した日本の設計会社が熱帯地域の気候条件に適した構造の新庁舎の設計を行いました。完成した庁舎は、3階建てで一階部分は断熱のために土盛りが施され、直射日光が建屋内に入り込むことを避けるために逆ピラミッド構造になっています(写真1)。総床面積は12,000平方メートルで、200名体制の職員でタイ王国内の産業界に計量標準を供給することができる施設となっています。NIMT職員は、2005年12月末までに仮庁舎から新庁舎への引っ越しが終了し、技術移転が終了した計量標準を基に本格的に校正サービスを行っています。

 NMIJではプロジェクトに先立ち、2001年から人材育成プロジェクトとして詳細な技術移転計画の策定を開始しました。プロジェクトの計画では、タイ王国の経済のグローバル化を前提にNIMTが国際的に承認される国家計量標準機関として自立することを目標に定め、NIMT職員の日本国内での研修(3ヶ月、36名)、NMIJをはじめとする日本の計量標準関連機関の職員をタイ王国へ派遣してのフォローアップ研修(1ヶ月、53名)を基本として技術移転を行ってきています。2003年1月から開始されたフォローアップ研修をかわきりにタイ王国への計量標準の設定は順次進められ、2006年度末までに物理標準18量目、電気標準13量目、そして化学標準6量目の計量標準がタイ王国に設定されました。

写真2

写真2 IAJapanから公布された認定証

 技術移転が終了した計量標準については、日本の認定機関であるIAJapan(International Accreditation Japan)に認定審査を依頼しISO/IEC 17025に準拠した国家計量標準機関の認定(ASNITE-NMI認定)の取得を目指しています。2004年1月に音響標準と波長標準の2分野の認定審査が行われ、同年6月に認定証の公布を受けました(写真2)。その後、硬さ標準、形状(内径外径、平面、表面粗さ、角度、真円度)標準の認定証の公布を受け、2007年1月から2月にかけ、pH標準、直流高電圧、振動・加速度標準、時間・周波数標準の認定審査を受けています。また、技術移転が完了した標準分野では、国際比較に積極的に参加し計量標準として重要な同等性の確認のために国際舞台で活躍しています。

 これまでの技術移転によりNIMTが実施できる校正サービスの種類や幅が広がり、自立発展していくことで、さらに拡大し、今後のタイ産業界の国際化対応を基礎の部分で支えていくと期待されています。NIMTはタイ王国の国家計量標準機関として、国内の二次標準器を校正するだけではなく、精度の高い標準については企業からの直接校正依頼も受け付けています。

 さらにNIMTは、セミナーとワークショップを頻繁に開催し、二次校正機関の技術レベルの底上げを図ることと、NIMT自身の技術レベルの向上を同時に進行させています。また、産総研など日本の関連機関から支援を受けながらアセアン諸国のために様々なセミナーや研修を開催しています。

 タイ王国の経済はここ数年で急速に発展し、支援受け入れ国から脱却し、日本とのパートナーシップ協力が求められています。プロジェクト終了後は、日本の支援を受けつつNIMTから周辺国への計量標準の技術移転や、産総研のパートナーとして研究協力ができる足がかりを築くことが期待されています。これによりNIMTから東南アジア諸国へ計量標準を供給し、新たなパートナーシップが生まれることになります。

 計量標準の分野は、科学技術・経済・社会基盤であり、華々しい成果を求めることは難しい分野です。しかし、計量標準の成果は、全ての国の社会で活用され、人々の生活に役立っています。計量標準分野では、長期間にわたる基礎研究の積み重ねと、このプロジェクトのような国際協力等によってイノベーションが実行されています。

今後のシリーズ展開

 これからのシリーズ連載では、本邦研修、フォローアップ研修、成果普及、展望などについてそれぞれ紹介し、最後にこのプロジェクトの今後の展開について紹介していきたいと考えています。

現地レポート

 プロジェクトサイトには、プロジェクトリーダー(秋元義明(産総研))、プロジェクト調整員(新関郁子氏(JICA))、専門家(前田恒昭(産総研))が派遣されており、タイ側との調整、プロジェクト調整、化学標準の指導を行っています。

 3月から4月にかけて短期専門家として磁気標準が専門の富永琢麿氏(日本電気検定所(JEMIC)、レーザパワー標準の宮脇雅裕氏((財)日本品質保証機構(JQA))、標準ガスの松本信洋氏(NMIJ)、が派遣されフォローアップ研修を行っています。

 今回の技術移転では日本の計量標準関連機関の指導の基で中小企業が所有する特別なノウハウで製作した標準機器(磁界発生装置、カロリメータ)を活用して磁気標準、レーザパワー標準や標準ガスの技術が移転されNIMTの組織強化に貢献しています。

 日本から派遣された短期専門家も派遣期間中にセミナーで講演し、計量標準の世界の動向や新しい計測技術の内容を紹介しています(写真3、4)。このように、このプロジェクトではNIMTが国際的に通用するよう技術の向上を支援しています。

写真3 写真4

写真3 富永専門家のセミナー風景

写真4 宮脇専門家のセミナー風景


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