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機能強化したADMER

 [PDF:913.5KB
細かい領域での濃度推定の精度を向上してVer.2.0を公開

東野 晴行の写真東野 晴行 ひがしの はるゆき
東野連絡先
化学物質リスク管理研究センター
環境暴露モデリングチーム 研究チーム長
(つくばセンター)
これまで、主に環境曝露濃度を推定するモデルの開発や排出量推計の分野で研究に携わってきており、得られた成果はADMERのようなソフトウェアやリスク評価書として、広く社会に還元してきました。今後も、ツールや評価書のような“目に見える製品”を生み出すという明確な目標を持って研究活動を行っていきたいと考えています。

開発の背景

 大気中の化学物質の濃度を、排出量と気象条件から計算するソフトウェア「ADMER(曝露・リスク評価大気拡散モデル:Atmospheric Dispersion Model for Exposure and Risk Assessment)」は、操作が簡単で誰でも入手できます。さらに、PRTR(環境汚染物質排出移動登録)制度が施行されて化学物質の種々の排出量データが容易に入手できるようになったことから、ユーザーが年々増加しており、すでに国や自治体・教育機関・企業などさまざまな所で大気系化学物質のリスク評価に活用されています。

 しかし、普及するにつれて、新たにいろいろな要望がユーザーから寄せられるようになりました。その中で、解析可能な空間解像度をもっと上げて欲しいという要望が最も多く見られました。これまでのADMERでは、空間解像度は5km×5kmが限度でした。この解像度は、関東全体のような地域スケールの分布状況を見るには最適ですが、特定の都道府県や市区町村程度の細かい領域で用いるために、より高い解像度の解析が望まれていました。

ADMERの機能強化

 細かい領域での解析精度を向上するには高解像度が必要ですが、空間解像度を上げると、計算時間や取り扱いデータの容量が増大し、実用上の問題が生じます。そこで、ADMER全体の空間解像度を上げるのではなく、指定した特定のグリッドについてだけ解像度の高い解析が可能な機能(サブグリッド解析機能)を開発し、空間解像度をこれまでの5kmから最高100mまで大幅に向上させました。この機能により、郊外都市のように化学物質の発生源の密度が比較的低い地域や沿道のように発生源と評価地点が近い場所での予測精度が大幅に向上しました。

 さらに、地理情報システム(GIS)の導入による図化機能と操作性の向上、解析に必要な気象、人口、土地利用などのデータの自動ダウンロード機能、市区町村別の平均濃度を自動的に計算する機能の付加など、ユーザーの要望に応えるさまざまな改良も同時に行いました。

ADMER Ver.2.0の無償公開

 このように機能を強化した最新版のADMER Ver.2.0は2007年1月11日から公開しており、ウェブサイト(下記アドレス)から誰でも無償でダウンロードして利用できます。

 http://www.riskcenter.jp/ADMER/

 今回のバージョンアップによって、モデルを用いた暴露とリスクの評価が、これまでの国レベルから地方自治体レベルにまで普及し、合理的なモニタリング計画や比較的小さな地域スケールでの化学物質の管理が進展することが期待されます。

図

図 新たに開発したADMER Ver.2.0の特徴
Ver.1.5では、モデルの解像度は最高で5km×5km、化学物質濃度表示画面は表示するだけで操作はできなかった。Ver.2.0では、最高で100m×100mの化学物質濃度分布が推定可能になった。また、GISの搭載により操作性や表示の自由度が向上した。


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