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マグネシウム・チタン薄膜を用いた調光ミラー

 [PDF:403.4KB
鏡状態から無色透明に切り替えできる新しい窓ガラス

吉村 和記の写真吉村 和記 よしむら かずき
吉村連絡先
サステナブルマテリアル研究部門
環境応答機能薄膜研究グループ 研究グループ長
(中部センター)
入所以来、調光薄膜を中心とする機能性薄膜の研究に取り組んでいます。2002年からこの調光ミラー薄膜の研究を始めました。鏡の状態から透明な状態に鮮やかに変化する材料なので、研究として非常に面白く、やりがいがあります。最初一人で始めた研究ですが、現在研究グループの三名の研究者と一緒に、調光ミラー薄膜に関する様々な研究に取り組んでいます。

調光ミラー

 「調光ミラー」とは、光の反射をコントロールして、鏡状態にしたり透明状態にしたりという切り替えができる薄膜材料です。これを建物や乗り物の窓ガラスに用いれば、省エネルギー特性にすぐれた窓が実現できます。私たちの研究グループでは、これまで、スイッチング特性にすぐれた調光ミラー材料として、マグネシウム・ニッケル合金を用いた調光ミラー薄膜の研究を行い、透明状態における可視光透過率の大きい材料を開発してきました[1]。ただ、マグネシウム・ニッケル合金を用いた材料では、どうしても、透明化したときに黄色味を帯びているという欠点があり、建物や乗り物用の窓では黄色系統の色は好まれないことから、実用化への障害になっていました。そこで、マグネシウム・ニッケル合金以外の材料を探索した結果、マグネシウム・チタン合金を用いた調光ミラー薄膜では、ほとんど無色に近い透明状態にできることを見出しました[2]

新しい調光ミラー薄膜材料

 マグネシウム・チタン系調光ミラーは、ガラス基板上に厚さ約40nmのマグネシウム・チタン合金の薄膜をスパッタ法で作成し、その上に厚さ約4nm程度の薄いパラジウム層をつけたものです。この薄膜は金属薄膜なので、銀色の鏡状態ですが、これを希薄な水素(約1%)を含む雰囲気にさらすと、マグネシウム・チタン層が水素化して透明になります。マグネシウム・チタン合金を用いた調光ミラー薄膜では、この透明化した状態がほぼ完全に無色で、まったく黄色味を帯びていないので、実用に適した光学特性をもっています。

 この調光薄膜を実際の調光ミラーガラスとして用いる場合は、図に示したように、片方のガラスの内側に調光薄膜を蒸着した二重ガラスにし、その間の空間に水を電気分解して発生した少量の水素や酸素を導入することでスイッチングを行います。この材料で窓ガラス(60cm×70cm)を試作し、写真に示したように、このサイズでも良好なスイッチング特性を示すことを確認しました。このような実サイズの調光ミラーガラスを実現したのは世界で初めてのことです。

今後の予定

 現時点ではまだ耐久性が十分ではないため、これを改善する研究を行っています。これが解決できれば、窓ガラスだけでなく、光スイッチ、家具、デコレーション材、玩具といったさまざまな応用が開けるものと期待されます。

図
写真(左) 写真(右)

図 調光ミラーガラスの構造
2重ガラスの内部の空間に水を電気分解して発生した水素または酸素を導入して切り替えを行います。

写真 大型調光ミラーガラス 鏡状態(左)と透明状態(右)

関連情報:
  • 参考文献
    [1] K. Yoshimura, et al. Appl. Phys. Lett. 81 (2002) 4709.
    [2] S. Bao, et al. to be published in Appl. Phys. A.
  • 共同研究者
    包山虎、田嶌一樹、山田保誠(環境応答機能薄膜研究グループ)
  • プレス発表
    2006年12月21日「無色透明になる調光ミラー用薄膜材料を開発

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