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秋田大学鉱山学部卒業、東京工業大学博士課程終了。マグマ中に含まれる揮発性成分(主に水)の起源や、マグマが地上に出る間の脱ガス過程を研究している。秋田大学時代の恩師が地熱発電に関係する研究をしていたこともあり、エネルギーや環境問題には以前から関心があった。ここ数年は放射性廃棄物の地層処分に関連する仕事をしている。 |
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宮城 磯治(みやぎ いそじ) |
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本格研究 理念から実践へ
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高レベル放射性物質の廃棄に関する本格研究
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現在火山が無い場所は、将来も火山が無いのか? |
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負の遺産:高レベル放射性廃棄物私たちが享受している豊かな生活は、電力無しには成立しません。国内では50基余りの原子炉が電力を供給する一方で、極めて毒性の強い高レベル放射性廃棄物も生み出しています。すでに発生してしまった廃棄物の問題に目をつぶることは許されません。毒性が自然に弱まるまで、10万年以上もの超長期間にわたり、生物圏から隔離しなければなりません。これが、この本格研究のニーズです。 人類初の挑戦 − 超長期の耐久性果たして人が造った容器はこの途方もない超長期間にわたり隔離性能を維持できるのでしょうか? 文明の歴史はたかだか数千年です。人類はそのような超長期の耐久性を持つ建造物を作った実績がありませんし、耐久性の評価さえおぼつきません。 世界中の科学者が知恵を絞った結果、廃棄物を丈夫な容器に入れたうえで安定な地層の中に安置する「地層処分」という手段が現在では最適な方法と考えられています。遮閉容器として地球の性能を利用するのです。地球の耐久性は人造構造物などの比ではありません。ただし、人造物がある目的のため綿密に設計されるのに対し、地球は地層処分のために造られた物ではありませんから、利用法を誤れば大変です。とりわけ日本のように地震や火山の多い地域では、処分場の立地にあたり、地球の実態と動作原理を十分に理解する必要があります。ここで紹介するのは、火山・マグマ活動についての研究(図1の黄色の範囲)の一部分です。
将来の噴火から処分場を守る噴火とは、マグマや火山ガス、そして地下で破砕された岩石が急速に地表に放出される現象の事で、大きな地殻変動を伴うことがあります。火山噴火のエネルギーは圧倒的で、もしも処分場が直撃されれば、廃棄物は粉々に砕かれて上空高く放出される可能性があります。噴火の直撃に耐える処分場を造ることが不可能なら、将来噴火の可能性がある地域への処分場の立地は、当然避けるべきです。 活動的な火山を抱える日本では、次の噴火に備えて災害予測図の作成などさまざまな取り組みがなされていますが、火山の無い地域に将来火山が新規出現することを想定した対策がなされた例は耳にしません。たしかに国内には、過去数百万年間火山噴火が無く、将来も噴火が無いと考えられている地域が存在します。しかし、それ以外の地域については、現時点で火山が無いから将来も噴火は無いと言い切ることはできません。火山の無かった場所で突然爆発的な噴火が起きた例はいくつか存在します。例えば秋田県の一目潟、山形県の肘折火山、宮城県の安達火山、北海道函館沖の銭亀火山などです。 廃棄物の毒性が自然に弱まるのに必要な期間が長いほど、「新規火山」の評価の重要性は大きくなってきます。 新規火山の事例研究ある地域に将来の新規火山が出現する可能性を科学的に評価するためには、マグマがどのような場所にどのような条件で発生蓄積し、そして噴火に至るのかを理解しなければなりません。事例研究を行った山形県の肘折火山の調査から、新規火山の特徴が見えてきました。 肘折火山はこれまで顕著な火山の無かった場所に今から約1万2千年前に新規に出現した火山で、比較的短期間(数百年?)に4回の大きな噴火活動をして、南へ5km 北へ9kmの地域を最大層厚150mもの火砕流で覆いつくしました。また、噴火の爆発力により火口の下約2km以浅の岩石を粉々に砕いて空高く放出し、それらを上空の風に乗せて東方60kmの地域に降らせたことが、地質調査からわかりました。現在の肘折火山には、直径約2km 深さ約200mの小カルデラの中に、今年で開湯1200年を迎える温泉が湧いています。 特徴的なマグマ蓄積過程実験室に持ち帰った噴出物をさまざまな観察手法を使って調べた結果、肘折のマグマ蓄積過程は浅間山や富士山のように繰り返し「既存の火山」が噴火する例とは大きく異なることがわかりました。 富士山や浅間山では「玄武岩」と呼ばれる高温のマグマが深部から供給され、これが直接、あるいは浅い所にあった低温のマグマと混ざって、地表に出ると考えられています。これに対して、肘折火山では、「石英安山岩」と呼ばれる比較的低温のマグマが火山の根っこに供給され、それがさらに冷えて、結晶をたくさん含んだ“お粥”のような状態で蓄積し噴火したようです。混じった側も混ぜられた側も同じ石英安山岩質です(図2)。
高温高圧実験により決定されたマグマの飽和含水量の圧力依存性と試料の分析(図3)により、その“お粥”の位置を地下10〜15kmと推定できました。また、石英安山岩質マグマの融点が含水量に大きく左右されることから、“お粥”の温度は約800℃、深部から供給されるマグマは約950℃と推定できました。玄武岩マグマの温度が約1200℃ですから、肘折火山のマグマはずいぶん低い温度で生じたことになります。 火山の根っこの深さと温度が推定できたことは、非火山性の地域における新規火山の可能性を判断するうえで重要なポイントになります。現代の地球物理学では、地震波の伝わり方を調べることによって、地下数十kmの岩盤の温度分布を広い範囲にわたって推定することが可能だからです。たとえば地下温度800℃〜950℃の地域分布から、肘折火山のようなマグマの発生の可能性を判断できるはずです。 10万〜100万年後の温度構造を予想するには、コンピュータを用いたマントル流動の数値モデル計算が必要です。その計算結果の信頼性は、地質学者が把握している過去何百万年以上の火成活動史がどれだけ正確に再現できるかによって評価できるでしょう。 今後は肘折火山にみられた特徴が他の新規火山にも共通するかどうか確認し、将来の火山活動の評価に役立ててゆきたいと思います。
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