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新潟県上越市沖の日本海海底で、海底に露出するメタンハイドレートの確認・採取に成功

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産総研地圏資源環境研究部門は、東京大学、海洋研究開発機構などとの共同研究で、新潟県上越市沖の日本海海底で巨大メタンプルームと海底面に露出する熱分解起源メタンハイドレートの確認・採取に成功し、このメタンハイドレートが海底下で柱状に分布していることを発見しました。


日本海の「燃える氷」

 メタンハイドレートはメタン分子が水分子のかご構造に取り込まれた化合物で、海底下数100mの堆積物中に広く分布していることがわかっています。メタンハイドレートは大量のメタンを含み、その外観がシャーベット状であることから「燃える氷」とも呼ばれ、石油や天然ガスなどの在来型エネルギー資源に変わる新しいエネルギー資源として注目されています。メタンハイドレートは温室効果ガスであるメタンを大量に周囲に放出するため、長期的な地球環境の変動要因としての可能性も指摘されていますが、そのメカニズムや規模は明らかにされていません。

 新潟県上越市沖日本海の、水深900〜1,000mの海底(図1)には、比高数10mのマウンド(小さな地形的高まり)やポックマークと呼ばれる巨大な窪地が発達していることから、海底からのガスの噴出が考えられます。ここでは、海底直下浅部にメタンハイドレートが分布していることがわかっていましたが、メタンハイドレートが海底にどの程度広く分布しているのか、また海底より下ではどの様に分布しているか、さらには海水中にメタンが放出されているのかはわかっていませんでした。これらの問題の解明のため、東京大学および海洋研究開発機構が中心となって、2004年の夏以来「海鷹丸」(東京海洋大学)、「なつしま」「かいよう」(海洋研究開発機構)などの調査船を使用した一連の調査航海が実施され、産総研からも海底メタンハイドレートの専門家が参加しました。

図1
図1 調査海域

今回の調査の成果

《巨大メタンプルームの映像化に成功》
 エコーサウンダー(計量魚探)による海水中の気泡の可視化を行った結果、海底から放出された大量のメタンによるガスの柱(メタンプルーム)の映像化に成功しました。この海域ではこのような巨大メタンプルームが多数認められるので、海底下から海底面に向かって大量のメタンが供給されていることが推定されます。

《海底のカメラ観察による変色域の発見》
 海洋研究開発機構所有の無人探査機「ハイパードルフィン」および深海曳航調査システム「ディープ・トウ」を用いて、水深約800〜1,000mの海底をカメラ観察した結果、マウンド(地形的な高まり)周辺の海底に非常に局所的ながら白っぽい変色域や急崖を発見しました。カメラ映像からは、この変色域はバクテリア、炭酸塩およびメタンハイドレートであると推定されました。

《メタンハイドレートの採取に成功》
 カメラ観察の結果に基づいて、変色域とその周辺においてピストンコアリング採泥を行い、メタンハイドレートの採取に成功しました。採取されたコアのうち5本でメタンハイドレートが確認され、メタンハイドレート層の採取長は最長で約2.6mでしたが、さらに深部に向かって連続して存在すると思われました。また、コア中には砂などを含まないメタンハイドレートの塊も多数含まれていました(写真)。これによって、カメラ観察で確認された変色域ではメタンハイドレートが海底に露出していることが確認されました。海底に露出するメタンハイドレートを発見し回収に成功したのは、日本近海のみならず東アジア周辺の海域では初めてのことです。

ピストンコアラーから取りだしたメタンハイドレート写真

写真 ピストンコアラーから取りだしたメタンハイドレート
常温では盛んに気泡(メタンガス)を出して溶けていく、まさしく「氷」である。

《ハイドレート中のメタンガスの起源の解明》
 回収されたメタンハイドレート中のメタンガスの炭素同位体分析を行った結果、これらが海底下数kmの深部で形成された熱分解起源ガスであることがわかり、メタンハイドレート中のメタンガスは海底下深部で形成された後、上方に移動して海底面に達したものであることが推定されました。現在、資源エネルギー庁のプロジェクトで調査が進められている東海沖の南海トラフ海域など、海洋のメタンハイドレートの多くは海底下数100mに分布していて、本海域のように海底にまで露出する例は極めて珍しいものです。また、海洋のメタンハイドレートは微生物起源の浅所メタンからなる例が一般的で、今回確認したような熱分解起源のメタンハイドレートは世界的にも限られています。熱分解起源ガスは地球深部に大量に腑存していると予想されていますから、今回の熱分解メタンハイドレートの発見によって日本海のメタンハイドレートの資源ポテンシャル評価が高まったといえます。

《海底電気探査による海底下のメタンハイドレート分布の解明》
 メタンハイドレートの海底下での分布を調査するために、前述の調査を実施した海域で、海中に微弱な電流を流して電気の流れやすさを調査したところ、通常の堆積物と比べて非常に高い電気抵抗を示す物質が海底下100m程度まで柱状に分布していることが分かりました(図2)。これは海底電気探査と呼ばれる手法で、陸上では一般的に用いられている手法ですが深海での曳航式探査は世界初です。メタンハイドレートが採取された地域(図2の青矢印部分)で最も高い電気抵抗値が認められていることおよびメタンハイドレートは電気抵抗の高い物質として知られていることから、この柱状の高抵抗物質はメタンハイドレートであると考えられます。このことから、本海域の海底下ではメタンハイドレートは地層のように水平方向に分布しているのではなく、「氷の柱」として局所的に存在していることが推定され、本海域でのメタンハイドレートの形成プロセスを考える上で重要なデータといえます。この推定は、メタンハイドレート中のガスが深部からもたらされたものであるという炭素同位体分析の結果とも整合するものです。

図2

図2 海底電気探査によって得られた海底下の電気抵抗断面図
海洋研究開発機構による。

成功要因と今後の展望

 以上のように、種々の地質学的・地球物理学的調査を総合的・集中的に実施したことにより、本海域でのメタンハイドレートの海底および海底下での分布の様子が明らかになってきました。これは参加各機関から地質学、地球化学、地球物理学、生物学等の専門家がチームを組んで参加したことにより可能となったことです。産総研にはこの海域の海底地質データが豊富に蓄積されており、今回の調査の際にもこれらの知見が活用されました。

 ピストンコアリングにより採取された堆積物の対比およびメタンハイドレートの産状についての研究は、産総研と海洋研究開発機構が中心になって実施しています。今後は採取されたコアの分析を進めて、本海域におけるメタンハイドレートの生成過程や環境に与える影響に関する研究をさらに進めていく予定です。


◆ 問い合わせ先

地圏資源環境研究部門 佐藤 幹夫 佐藤連絡先
           奥田 義久 奥田連絡先

◆ 関連サイト

東京大学大学院理学系研究科プレスリリース
 http://www.s.u-tokyo.ac.jp/info/methane.html

海洋研究開発機構プレスリリース
 http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/PR/0602/0220/index.html


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