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2005年パキスタン地震で出現した地震断層

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現地調査により長さ約65kmの全容をはじめて解明

2005年10月8日にパキスタン北部で発生した大地震(マグニチュード7.6)について、国際チームによる予察調査を実施し、長さ約65kmの地震断層が地表に出現したことをはじめて現地で確認した。ヒマラヤ山脈前縁地域のみならず世界中で多くの逆断層型大地震が発生してきたが、明瞭な地震断層の出現が確認された事例は極めて少ない。今後の詳細調査により、逆断層型の活断層から発生する地震の予測に大きく貢献することが期待される。
粟田 泰夫・金田 平太郎の写真粟田 泰夫
あわた やすお(右)
活断層研究センター
地震テクトニクス研究チーム 研究チーム長
(つくばセンター)
粟田連絡先
日本国内の主要活断層の活動履歴と将来発生する地震の長期予測に関する研究を実施してきた。最近では、世界各地で出現する大小様々な地震断層の実地調査に基づいた比較研究により、内陸の活断層から発生する地震の規模とシナリオの予測精度を向上させることに研究の重点を置いている。1995年兵庫県南部地震、1998年岩手県内陸北部の地震、1999年トルコ・イズミット地震、2004年新潟県中越地震などの地震断層を調査した経験をもつ。
金田 平太郎
かねだ へいたろう(左)
活断層研究センター
活断層調査研究チーム 研究員
(つくばセンター)
金田連絡先
2005年4月産総研入所。主として地形学的手法に基づく活断層・古地震の研究が専門。大地震が繰り返し発生することによって形成された独特の地形(活断層地形)を丹念に実地調査することにより、過去、どのような地震がどのように繰り返してきたのかを明らかにしようと努めている。最近では、複数の活断層が同時に活動することによって想定以上の規模の地震が発生する現象(活断層の連動破壊)に取り組んでおり、そういった観点からも2005年パキスタン地震に興味を持っている。
Reconnaissance field investigation conducted by our international team revealed the outline of the 65-km-long surface fault rupture associated with Mw 7.6 earthquake in northern Pakistan on October 8, 2005. Among the historically known large earthquakes along the Indian-Eurasian collision zone and elsewhere in the world, this earthquake provided very rare opportunity to study extensive surface rupture of reverse type. More detailed study on this rupture planned in March 2006 will make great contribution to the evaluation of future earthquakes from active faults of this type.

2005年パキスタンは地震逆断層型大地震であった

 2005年10月8日にパキスタン北部のヒマラヤ山脈前縁で発生したマグニチュード(Mw)7.6の大地震は、逆断層型の発震機構をもち、カシミール地方を中心に86,000人以上の犠牲者をもたらした。ヒマラヤ山脈前縁では、1905年、1932年および1950年にも隣国のインド領内で大地震が発生しているが、それらの大地震にともなう地震断層や顕著な地殻変動は発見されておらず、地震発生メカニズムには多くの謎が残されていた。また、世界的に見ても、逆断層型の大地震にともなう地震断層は、わずかに1896年陸羽地震と1999年Chi-Chi地震(台湾)で報告されているにすぎなかった。

緊急調査実施の経緯

 活断層研究センターでは、同地震にともなう地震断層の調査を重要な基礎研究かつ国際協力の課題ととらえて、地質調査総合センターを通じてパキスタン地質調査所との間で現地調査の可能性を探ってきた。このたび、2006年1月にパキスタンで地震災害に関する国際会議が開催されたのを機に、国内外の大学・研究機関と合同で8日間の現地調査を実施した。その結果、長さ約65kmに及ぶ地震断層の全容をはじめて確認できた。

確認された地震断層の概要

 地震断層は、おおむね既存の活断層1、2)に一致して、長さ約65kmにわたって出現していた(図1、2および写真)。このうち、北西部から中部にかけての約50kmの主要区間は、逆断層成分が卓越する変位量の大きな地震断層で、上下成分で最大5.5m(北東側隆起:写真C)、水平成分を含めると最大約9mの実変位が計測できた。また、いくつかの調査地点では、わずかな右横ずれ成分も認められた。なお、この主要区間では、北西部と中央部の間で断層線の屈曲をともなう不連続構造が認められた。地震断層の南東部15km区間では、地震断層の連続性は不明瞭であるが、山間部の2カ所において数10cm以下のわずかな右横ずれ変位をともなう地震断層が発見できた。

 このような地震断層の出現状況から、今回の地震では、北西部と中部のそれぞれ長さ約20〜30kmの断層セグメントで大きな変位をともなった破壊があり、また南東部の断層セグメントでもやや小規模な変位をともなう断層の破壊があったことが推定できる。このメカニズムは、人工衛星による観測データの解析結果から推定された地震にともなう地殻変動の分布と規模3)、および地震波形から解析された震源過程4)とも、おおむね一致する。

 地震による被害がとくに大きかったBalakotの市街地やMuzaffarabad北方の集落は、いずれも地震断層の直上あるいは極めて近接した位置にある。また、地震断層付近では周辺と比べて家屋の倒壊率が高くなる傾向が認められた。これらは、断層変位による地盤の変形が被害を大きくしたほか、断層の近傍でとくに揺れが大きかったことを示唆する。

図1

図1 2005年パキスタン地震にともなう地震断層と関連する活断層の概要


図2

図2 今回の地震による変位(4.5m)と活断層による累積的変位の比較


図3

写真 各地で見られた地震断層の事例写真
A:Balakot市街地の撓曲変形(図1の地点1)
B:Muzaffarabad北方の地震断層(地点2)
C:現河床沿いの最低位段丘面の変位(地点3)
D:河川敷の変位(地点4)

今後の研究予定

 地震断層の概要が明らかになったことを受けて、本年3月に、広島工業大学、京都大学、パキスタン地質調査所と共同で、地震断層の主要区間の全踏査による詳細調査を実施する予定である。また、パキスタン地質調査所とは、同国内における活断層・古地震研究にかかわる人材育成と同国全土の活断層分布図の作成について、中−長期的な協力のあり方を協議しているところである。


関連情報:
  • 合同調査チーム:粟田泰夫,金田平太郎(産総研 活断層研究センター),中田 高(広島工業大学),堤 浩之(京都大学),A.A. Awan, A. Hussain, W. Khattak, M. Ashraf(パキスタン地質調査所),R.S. Yeats(Earth Consultants International/オレゴン州立大学),M.S. Baig(A.J.カシミール大学)
  • 1) T. Nakata et al., Spe. Publication, Res. Center Regional Geography,Hiroshima Univ., No.21, 141p.(1991)
  • 2) T. Nakata and Y. Kumahara., Extended Abst. Inter. Confer. Earthq. Pakistan, 12-16(2006)
  • 3) S. Fujuwara et al., Extended Abst. Inter. Confer. Earthq. Pakistan, 99-104(2006)
  • 4) 八木勇治 http://www.geo.tsukuba.ac.jp/press_HP/yagi/EQ/2005Pakistan/ (2005)

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