アンプル認識の必要性
現在、病院においては医師の処方に従って薬剤師が医薬品アンプルの払い出しを行っている。大きな病院では払い出し量も多いため、薬剤師の負担が大きく、薬剤の種類を間違えるなどの人的ミスが医療事故の約15%を占めている。
このような事故を防ぐためには、医薬品アンプルを取り扱う作業の自動化が有効である。現在、医師により入力された電子カルテの指示に従って薬剤を払い出す自動払い出し薬品棚は使用されているが、棚に薬剤を格納する作業は人手によって行われている。
また、平成17年4月に改正された薬事法において医療材料のトレーサビリティが義務付けられたことをうけて、同年9月に日本製薬団体連合会(日薬連)が医薬品流通コードを標準化した。今後は医薬品アンプルなどを対象にバーコード(UCC/EAN-128)の貼り付けが進むことになり、これによって薬剤の種類を機械的に判別することが可能になった。しかし、人間がバーコードリーダーまで運ぶ作業をしなければならない状態では、ヒューマンエラーによるミスを完全に防ぐことはできない。
そこで、医薬品アンプルを自動的に認識し、ロボットでハンドリングし、バーコードの情報をもとに正確に自動払い出し薬品棚に格納するシステムが求められていた。
開発の経緯
開発における大きな課題は、医薬品アンプルの認識手法であった。通常、梱包から取り出された医薬品アンプルは乱雑に置かれ、しばしば一部が積み重なっている。そのため、単純な二次元の画像処理では認識ができない。また、医薬品アンプルには光沢があるため従来の三次元計測でも認識が難しかった。
この課題は、オオクマ電子株式会社のハンドリングシステムに、産総研が開発した高機能三次元視覚システムと株式会社アプライド・ビジョン・システムズが開発しているその応用ソフトを組み合わせることで解決できると考え、三者による共同研究を行った。その結果、今回のシステム(図1)を実現した。このシステムでは、図2のように乱雑に置かれたアンプルの認識を行い、図3のような整理された状態にすることができる。
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図2 乱雑なアンプル
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図1 アンプルハンドリングシステム |
図3 整理されたアンプル |
正反射物体の計測
積み重なったりさまざまな姿勢で置かれている物体を認識するためには、二次元の画像処理では限界があり、三次元の物体認識が必要になる。しかし、薬品アンプルなどのように光沢のある物体の場合には、物体表面に正反射によるハレーションが現れるために三次元計測が困難になる。このシステムでは、高機能三次元視覚システムをベースとしてステレオ相関法を改良し、三眼カメラシステムの画像を使うことで光沢のある対象物体の測定を可能にした。
この手法では、正反射の特性を利用している。正反射は鏡面反射とも呼ばれているように、反射面において鏡のように入射角と反射角が等しくなる方向に光を反射する。すなわち、ある点Paに着目した場合、点Paからの正反射を受けるカメラは複数あるカメラのうち1台だけになる(図4)。したがって、3台のカメラを用意してPaを撮影すると、1台のカメラに正反射があっても他の2台のカメラには正反射が写らない。この2台のカメラを使えば、正反射の影響を受けずに三次元計測が可能になる。このシステムでは、正反射を受けない2台のカメラを自動的に判定し、具体的な位置確認はステレオ相関法を用いている。
その後、三次元データを処理してラベル部分の円柱形状を抽出し、アンプルとして認識している。図5に複数のアンプルを撮影したカメラ画像、図6にその認識結果の円柱を示した。
![]() 図4 正反射問題の解決方法 |
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図5 アンプル画像
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図6 アンプルの認識結果画像 |
今後の予定
今回発表したシステムはプロトタイプであり、今後はこれをベースに実用化システムを2年以内に開発する予定である。このシステムにより、病院などの薬局における薬品管理の自動化が可能になり、薬品の取り違えによる医療事故を大幅に減らすと同時に、薬品管理にあたる薬剤師の厳しい労働条件の緩和にもつながるものと考えている。

吉見 隆




