二酸化チタンは顔料、食品や医薬品の添加剤などとしても多用される工業的に重要な材料であり、近年、有機物を分解する光触媒として非常に注目されている。現在使用されている二酸化チタンは、ルチル型もしくはアナターゼ型の結晶構造をもつものが多いが、それらの混合物や、一部を他の元素に置き換えたものを用いて、さらなる応用分野が開発されている。我々は、アルカリ遷移金属酸化物を中心とした機能性無機酸化物に関する研究を進めてきたが、今回、出発原料であるラムスデライト型二酸化チタンTiO2(R)を150℃〜400℃で熱処理を行うことによって、新たな結晶構造を有する二酸化チタンの創製と製造方法の確立に成功した。この新型構造は、TiO6の八面体が稜共有して2列つながったラムスデライト型の部分構造と、1列からなるルチル型の部分構造が交互に積層したインターグロース構造を持ち、しかもこの両者の部分構造の割合を任意に制御できることが大きな特徴である(図1)。
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図1 ルチル型二酸化チタン(a)、新型二酸化チタン(b)、ラムスデライト型二酸化チタン(c)の結晶構造
ここで新型二酸化チタン(b)は、ルチル型とラムスデライト型それぞれの割合が1:1の場合についてのインターグロース構造を示した。 |
新型二酸化チタンの作製
出発原料は、ラムスデライト型Li0.5TiO2を化学酸化によりリチウム脱離処理して得られるラムスデライト型二酸化チタンTiO2(R)である。次に、この白色粉末を、空気中25℃〜600℃の温度範囲で1時間精密に加熱処理して粉末試料を作製した。加熱処理後の室温における粉末X線回折データを図2に示す。熱処理温度の上昇に伴って、200℃付近からインターグロース構造を有する新型二酸化チタンが生成し、さらに温度を上げると約400℃でルチル型二酸化チタンに構造が変化した。新型二酸化チタンのX線回折ピークはルチル型と類似しているが、ピークプロファイルが拡がっていることで区別できる。また、ラムスデライト型二酸化チタンから新型二酸化チタン及びルチル型二酸化チタンへの構造変化が連続的であることも明らかとなった。
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図2 ラムスデライト型二酸化チタン、新型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン粉末試料の粉末X線回折図形
新型二酸化チタンの図形から、加熱処理温度が低いほど、ピークプロファイルが広がっている様子が分かる。 |
二酸化チタンの光特性
上記3種類の二酸化チタンについて、光機能において重要となるバンドギャップEgを決定するために、300nmから600nmの可視紫外吸収スペクトルを測定した。得られた結果(図3)より、ラムスデライト型二酸化チタンから、新型二酸化チタン及びルチル型二酸化チタンへの吸収スペクトル変化も連続的に起こることが明らかとなった。さらに単結晶X線回折法から得られた結晶構造を初期パラメータとして(図4)ラムスデライト型および、ルチル型二酸化チタンの電子状態を計算したところ(図5)、Egの値は、絶対値としては若干過小であるが、定性的に実験結果とよく整合しており、ラムスデライト型二酸化チタンのバンドギャップが他の結晶構造の二酸化チタンより大きいことが明らかとなった。ただし新型二酸化チタンにおけるインターグロース構造の電子状態を計算する上では、結晶構造の詳細を明らかにすることが重要であり、現在鋭意研究中である。
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図3 ラムスデライト型、ルチル型及び新型二酸化チタン粉末試料の吸収スペクトル測定結果
バンドギャップ値はそれぞれラムスデライト型: 3.34eV, 新型二酸化チタン: 3.04eV, ルチル型3.00eVである。 |
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図4 最大エントロピー法(実験)及び第一原理計算法(計算)により得られたラムスデライト型二酸化チタンの三次元電子密度分布
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図5 第一原理計算により得られたルチル型(a) 、ラムスデライト型(b)二酸化チタンの電子状態密度
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今後の展開
今回紹介した新型二酸化チタンは、出発原料や熱処理温度を変化させることにより結晶構造や電子構造、さらには光触媒などの光機能性を広範に制御できることが期待される。これらの制御変数が結晶構造や電子構造、光物性等に及ぼす影響を詳細に検討し、新規光機能材料の開発に展開していきたい。





