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クルマと環境

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自動車社会の未来を技術で考える


燃費向上でCO2削減
軽量化のための構造材と加工技術
サステナブルマテリアル研究部門 副研究部門長
中村 守

自動車用の構造材に求められるもの

 自動車の運転性能向上のための車体の軽量化と空力特性の改善は、自動車開発における昔からの重要な課題です。最近では、二酸化炭素の温室効果による地球温暖化が全人類の直面している危機として認識されるようになり、全世界で8億台以上保有され、日々増加しつつある自動車から放出される、大量の二酸化炭素の影響に注目が集まる中で、燃費改善による排出量削減が強く求められています。それを受けて、燃費改善のために車体を一層軽量化するための研究開発が、世界中で精力的に実施されています(通常のガソリン車では、車体重量1トンから1.5トンの範囲では、100kgの軽量化で燃費が約1km/L程度改善することが知られています)。

 しかしながら、自動車が人間を運ぶ機械であるため、人間の身長や体重に制約される車体の小型化には限界があり、車体重量を増加させる要因である衝突安全性や快適性の要求水準は年々高度になるという厳しい条件が、車体軽量化の努力には課せられています。

 自動車を構成する材料は、自動車の生産台数が膨大であることから、地球における埋蔵資源が十分に豊富で、できるだけ少ない環境負荷で製造やリサイクルが可能であることが求められます。中国やインド等のBRICs諸国の人口を考慮して、将来の世界の自動車保有台数を20億台と考えると、自動車1台当たり100キロ使用される材料は、2億トンが市場に流通し、毎年数千万トンの部材が製造される材料であり、資源の制約から候補材料は、鉄、アルミ、マグネシウム及びプラスチックに限られます。その上で、材料には易リサイクル性が求められ、部材の価格は自動車用部材として受け入れられるレベルにまで廉価であること、構造材としての優れた機械的特性(特に高い比強度)を有し、複雑形状部材の成形加工が容易であることなど、多くの条件を満たさなくてはなりません。

産総研における研究開発

 産総研では、車体の軽量化に資する研究開発として、軽量金属であるマグネシウム合金、アルミニウム合金について、ナノレベルから部材寸法にわたる組織制御による特性の向上と多様化及び成形加工に関わる研究開発を行っています。合金設計ではなく、組織制御に注力しているのは、自動車の構造材として大量に使用することを想定すると、埋蔵資源の量的な制約や偏在によって将来の安定供給に不安のあるレアアース等を、機能向上のための添加元素として使用することは、可能な限り避けることが望ましいと考えているからです。

 マグネシウム合金等の軽量金属材料を対象とした主な研究課題は以下のとおりです。

  1. 金属ガラス化、結晶の極微細化による高強度・易加工性化等の特性向上及び、多孔質化による衝撃吸収能の向上等の、各種の高性能化組織制御プロセス技術の開発

  2. セミソリッド成形技術、連続鋳造技術、超塑性加工技術、摩擦攪拌接合技術、異周速圧延技術等の、組織制御技術と融合した成形加工技術の開発

  3. 固体プロセスを用いたアップグレードリサイクル技術の開発

 図1は、冷却凝固過程にある溶融金属に電磁振動を付加することで、微細な気泡を発生させ、それらが崩壊する際のミクロ領域での超高圧超高温を利用して、金属ガラス化過程における冷却速度の影響を低減し、金属ガラスを創製した実例です。このプロセスにより、優れた強度と耐食性を示す軽量金属の金属ガラスや微細結晶材料を低コストで量産する技術の確立が期待されます。

図1

図1 金属ガラス形成能に及ぼす電磁振動力の影響
(Mg-25Cu-10Y合金、金属に流れる電流:5A、電磁振動の周波数:5000Hz)

 図2は、強加工によって結晶粒子を微細化したアルミニウムの組織です。成形すべき部材の形状・寸法によって、適切な組織制御プロセスを選択できるように、多様なプロセスを研究しています。

図2

図2 強加工によって結晶粒を1ミクロン程度まで微細化した純アルミニウムの透過電子顕微鏡写真

 図3は、価値の低いスクラップを、鍛造加工可能で高強度な価値の高い素材に、溶融過程を経ずに再生する、アップグレード固体リサイクル技術の概念を示したものです。固相状態での強加工と、それによる表面酸化層の破砕とスクラップ同士の結合とを利用した省エネルギー型のプロセスです。

図3

図3 アップグレード固体リサイクル技術の研究開発の概要


低フリクションで効率を上げる
先進製造プロセス研究部門
北 英紀

どうやってエンジンの摩擦を小さくするのか

 エンジンの摩擦損失の低減は、環境、安全・信頼性、そして経済性といった多くの技術軸の中で捉え、その対応においては各部の潤滑状態を把握した上で、潤滑油、材料、設計をうまく組合せた手法を採る事が必要です(図1、2参照)。例えば流体潤滑が主体となるピストン系の場合、潤滑油の低粘度化は摩擦低減に有効ですが、その場合、低速域や始動・停止時には境界潤滑域が拡大し、また元々境界潤滑が主体の動弁系では摩耗や焼付きが生じ易くなります。摩擦調整剤はこうした問題を防止する為に添加されますが、材料表面とのトライボケミカル反応の起り易さによって効果は異なる事があり、例えば無潤滑で摩擦係数の小さい材料が必ずしも油潤滑下で低摩擦を示すとは限らないのです。

今後どんな研究や技術が必要か

 今後、益々厳しくなる排ガス規制への対応として潤滑油中の灰分や燃料の硫黄分は減り、またDMEやGTL等、多様化する燃料は摩擦や摩耗にとって不利な要因を含んでいます。それを乗り越え、低フリクションエンジンを実現するには新しいコーティングや表面改質は不可欠な技術ですが、それには材料と潤滑油との相互作用を明らかにする研究や材料を活かす設計など、分野を超えて境界領域の課題解決に取組んでいく事が必要となっています。

図1

図1 摩擦損失を低減するための手法とねらい


図2

図2 エンジン各部の潤滑状態と摩擦低減手法との対応


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