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高速全自動タンパク質二次元電気泳動システム

 [PDF:672.1KB
診断、創薬、プロテオーム研究を加速するバイオツール

バイオニクス研究センター・プロテインシステムチップチームは、東京工科大学、シャープ株式会社、凸版印刷株式会社、アステラス製薬株式会社と共同で、全自動二次元電気泳動システム(図1)を開発した。このシステムでは、生体サンプルの注入から、等電点電気泳動、タンパク質の染色、洗浄、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、検出まですべての操作を自動化した。これにより、従来1日以上かかっていたタンパク質の二次元電気泳動が、約1時間で行えるようになった。
横山 憲二の写真横山 憲二
よこやま けんじ
バイオニクス研究センター
副研究センター長兼プロテインシステム チップチーム長
横山連絡先
平成14年、北陸先端科学技術大学院大学助教授から先端バイオエレクトロニクス研究ラボ副研究ラボ長に転職。センター化後、現職。専門はバイオセンシング、生体機能分子工学。今後とも、バイオセンシングの出口である、臨床診断、環境計測などに応用できる技術開発を行っていきたい。
Proteomic Device Team, Research Center of Advanced Bionics, AIST, has developed an innovative full-automatic 2D electrophoresis system in collaboration with Tokyo University of Technology, Sharp Corp., Toppan Printing Co. Ltd. and Astellas Pharma, Inc. This research has enabled us to reduce 2D electrophoresis time for longer than a day to around 1 hour. In the newly developed system, all the operations, such as injection of biological samples, isoelectric focusing, staining of proteins, rinsing, polyacrylamide gel electrophoresis and detection, are fully automated. This system has also realized highly reproducible 2D electrophoresis.

二次元電気泳動の問題点

 タンパク質を網羅的に解析する方法としては、現在二次元電気泳動法が一般的である。しかし、一般的な二次元電気泳動は、20cm以上のサイズのゲルを使用するものがほとんどで、試料のタンパク質が等電点電気泳動(IEF)に用いるゲル内に浸透するまでの時間、タンパク質を色素で染色する時間、過剰な色素を除去する時間などで1日以上必要としている。さらに、タンパク質試料の注入やIEF後のゲルをドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate, SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(polyacrylamide gel electrophoresis, PAGE)ゲルのスタートラインまで移動させる操作など、自動化が難しいといった欠点がある。そのため、二次元電気泳動は、専門技術者だけが行える方法となっており、大規模なプロテオーム解析の立ち遅れを招いている。

図1
図1 全自動二次元電気泳動システム構成図

産学官による研究体制

 産総研と東京工科大学は、電気泳動法をもとにタンパク質などの物質を分離する新しい方法を開発してきた。さらに、この技術をもとに、シャープ、凸版印刷、アステラス製薬(当時の藤沢薬品工業株式会社)と共同で、全自動タンパク質解析のためのバイオチップの開発に着手した。

二次元電気泳動システムの自動化

 この研究開発は、タンパク質を解析するための1.二次元電気泳動用のチップ、2.二次元電気泳動自動化システム、3.二次元タンパク質検出器の作製、4.タンパク質試料の前処理法の開発からなる。チップはプラスチック基板を切削加工または射出成形することにより作製した。現在、一部にガラスを使用しているが、最終的にはすべてプラスチックで置き換える予定である。二次元電気泳動では、第1段階のIEF終了後、IEFゲルを壊さないように第2段階のSDS−PAGEゲルのスタートラインに移動させる必要がある。このシステムでは、コンピュータ制御により、IEFゲルを自動搬送する。また、新しいタンパク質の検出法としてIEFとSDS−PAGEの間でタンパク質を迅速に染色する中間染色法を開発した。さらに蛍光色素染色、過剰色素の洗浄、SDS化処理をチップ上で自動的に行うシステムを作製した。検出は、染色したタンパク質の蛍光を測定する。現在、高感度CCDカメラを用いた検出システムを用いている。

 我々はこのようにして、2次元電気泳動による分離システムの開発に成功した。このシステムは従来の電気泳動法システムの1/4以下の大きさで、所要時間を約一時間と大幅に短縮した。

図2
図2 全自動二次元電気泳動システム

タンパク質の前処理法の開発

 一方で、電気泳動によるタンパク質の分離・検出を可能とするために、新たなタンパク質の前処理方法を開発した。生体試料には解析を妨害するタンパク質が大量に含まれており、これまでの方法では重要なタンパク質(多くの場合に微量)の解析の際に問題になることが多かった。血清中に含まれるタンパク質の量は、少ないもので1pg/mL、多いもので5×1010pg/mLと100億倍以上の広範囲に及ぶ。なかでもアルブミンやグロブリンなどプロテオーム解析には不要なタンパク質が全含有量の90%以上を占めており、これらが電気泳動法のみならずタンパク質の分離・検出を困難にしていた。我々は、血清から多量に含まれる不要なタンパク質の除去と、特定タンパク質群の分画を組み合わせて、タンパク質を系統的に分画する前処理方法を開発した。

今後の展開

 このシステムは、今後1年程度の準備期間を経て、市販される計画である。その間に、分離能、測定感度、再現性のさらなる向上を図る。大学医学部などと連携して、このシステムが疾患に関連するタンパク質の解析ツールとして利用できるかその可能性を実証する。また最終的には、疾患診断機器としての応用を目指していきたい(図3)。

図3
図3 臨床用途イメージ
電動泳動像の比較により病気の状況を判断

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