独立行政法人産業技術総合研究所
現在位置広報活動 > 出版物 > 産総研 TODAY Vol.5(2005) 一覧 > VOL.5 No.12 > 産総研における産学官連携活動の戦略と展開

産総研における産学官連携活動の戦略と展開

 [PDF:639.0KB

産学官連携と工業標準化
研究開発と国際標準化の一体的推進

国際標準化活動の重要性

 携帯電話やコンピュータなどの情報通信機器の発展、あるいは地球温暖化対策に代表される環境問題対応など、経済活動のグローバル化が企業経営戦略に大きなウエイトを占めるようになったことから、国際規格をわが国主導で制定できる環境の整備が重要となっています。特に、多国間にまたがる環境規制や貿易の技術的障害問題などでは、国際規格に順ずることが求められるため、標準化戦略が国の産業競争力に与える影響が強く認識されています。

 研究開発が産業応用段階に至ってから標準化について議論する従来方式では、世界的競争の中で標準化の主導権を得ることが難しいのが現状です。そこで研究開発段階から標準化を見据えた取り組みが必要とされています。ISO(国際標準化機構)やIEC(国際電気標準会議)など公的機関におけるデジュール規格策定では、経済産業省が主管する日本工業標準調査会(JISC)が国を代表する唯一の参加機関として活動しています。また、任意に形成される国際フォーラムや企業コンソーシアムなどでの標準化活動も重要です。

 これらの標準化活動は、図9に示すように消費者、産業界、学界、政府機関などと、広く国民全体のコンセンサスを形成しながら進めることが重要であり、研究者個人の発想で展開できるものではなく、産学官の連携が不可欠であることは言うまでもありません。すなわち、標準化活動は産総研がめざす産業界に直接貢献する成果の社会還元であると言えます。そのような活動が効率よく行われるように、産総研では産学官連携推進部門に工業標準部を設置し、様々なツールを用意して研究開発と標準化の一体的な推進を支援しています。次に、いくつかの具体的活動を紹介します。

図9
図9 国際標準化活動にかかわる組織と、産総研の研究開発および工業標準部との関係

標準化活動における産学官連携

 産総研では、図9に黄色の矢印で示した、(1)標準化研究費の配分・進捗管理、(2)産学官連携活動の支援と評価・広報、(3)国際標準化活動、を主な支援ツールとして実施しています。

(1) 標準化研究費の配分と進捗管理

 標準化研究課題としては主に、政府関係機関が政策として必要とする分野、あるいは先端技術開発や福祉技術開発など、企業利益に結びつきにくく企業団体などでは対応しにくい分野について、基礎的研究開発が十分進んでいるものでかつ業界団体の要望も高いものの中から取り上げています(図3参照)。平成17年度は、標準化基盤研究(産総研運営費交付金)、エネルギー・環境技術標準基盤研究(経済産業省委託費)、基準認証研究開発事業(経済産業省公募)などの予算制度において4億2千万円の標準化研究費を確保し、35テーマを実施しています。

 研究期間中は、経済産業省関係原課の協力の下、すべてのテーマについて半年に1回の頻度で「進捗状況連絡会」を開催し、必要に応じて産業界や行政当局との連携調整を支援するなど、効率的に標準策定段階に進めるように進捗管理に努めています。個別の研究テーマの具体的な内容については、「AIST Today」 2004年8月号の工業標準化特集を参照してください。

(2) 標準化における産学官連携活動の支援と評価・広報

 標準化研究が順調に進捗し、規格原案策定の段階に至ったものについては、日本工業規格(JIS)であれば原案作成委員会を組織して、規格原案を審議します。この委員会には、生産者、使用・消費者と行政機関や学術的専門家などの中立者が参加しますが、産総研は、この委員会の運営を自ら行ったり、あるいは関係業界団体等と協力して、国内産学官の利害関係者の意見を調整します。国際標準化では、ISO、IECに設置される専門委員会(Technical Committee)ごとに国内審議団体がおかれ、日本国内意見をまとめます。標準化研究を推進する研究者には、これらの国内審議団体活動で重要な役割を果たすように勧めています。今年8月からは、産総研がISO/TC229(ナノテクノロジー)の国内審議団体を引き受け、日本の代表機関として国内産学官の利害関係者の意見を調整する任に当たることになりました。このような国際標準化活動をフォローアップすることによって、標準化の進捗を評価していきます。また、産総研の工業標準化に対する取り組みの状況について、ウェブページでお知らせするとともに、JISパビリオンで常設の展示を行っています(写真3参照)。平成17年10月1日には改正JIS法(工業標準化法)が施行されJISマークが変更されたため新JISマークも展示し、広報・普及に取り組んでいます。

 http://unit.aist.go.jp/collab-pro/indus-stan/ci/

写真3_1 写真3_2
写真3_3
写真3 JIS パビリオン

(3) 国際標準化活動

 国際標準化活動では、標準化による利益を、だれもが最大に享受できるように各国の利害対立を避けてまとめ上げることが必要ですが、議長や幹事など、議論をリードする人材が重要なことは言うまでもありません。日本工業標準調査会(JISC)「国際標準化活動基盤強化アクションプラン(平成16年6月)」において、特定の企業の利益に偏らない公平な立場を有し、かつ工業標準に関する研究ノウハウと人材を豊富に蓄積している産総研に、さらなる幹事国の引受や議長・コンビナー就任に向けた人材の輩出等への大きな期待が寄せられています。

 産総研では、これに応えるため、標準化国際会議に積極的に参加するための旅費支援に加えて、国際標準化業務にかかる事務負担を支援して、国際標準化活動において役職に就くことを奨励しています。平成17年9月現在、15名の産総研研究者が国際幹事・コンビナーの要職に就いており、これはISO/IECにおける日本人要職者全体の約7%にあたります。今後、工業標準化研究が広く展開され、国際提案に至るテーマが拡大するに伴って、このような貢献がより拡大していくものと期待しています。


前頁

戻る産総研 TODAY Vol.5 No.12に戻る