| NMR表面スキャナー | [PDF:691.5KB] |
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コンクリートの新しいメンテナンス技術の提案 |
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コンクリートメンテナンスの重要性 コンクリートは、他の建築材料と同様、いつかは耐用年数を迎えて崩壊する。コンクリートブロックの崩落事故は1999年ころ新幹線トンネルで頻発して社会問題になったが、今後さらなる崩壊が起こる可能性が指摘されている。高度経済成長期以降に建設された多くのトンネル、橋梁、およびマンションが2006年以降次々と寿命を迎えるからである。言うまでもなく、コンクリート建造物の崩壊は、国民の生命と財産を脅かす深刻な危機であり、事故を未然に防ぎ建造物の寿命を延ばすため、保守点検によって欠陥を早期発見し適切な補修工事を施す必要がある。そのため、より精度の高いメンテナンス技術の新規開発が社会から求められている状況にある。種々のコンクリート欠陥の中でも、水を含む空洞や亀裂は、凍結による亀裂進展、雨水や地下水の浸透によるセメント水和物や鉄筋の変質を引き起こすので、早期に検出しなければならない危険性の高いものである。しかし、赤外線や打音等の従来の検査技術では、水を含む欠陥を定量的に評価・検出できない場合がしばしばある。このような社会的、技術的状況をふまえて、産総研では、プロトン核磁気共鳴分光学を応用して、水を定量計測できる物理探査装置(図1)の開発を行っている。今回は、その開発の進捗状況を報告する。
NMR表面スキャナー 核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、以下NMRと略記)とは、磁石とコイルを用いて原子核の状態を測定する方法である。コンクリート欠陥の評価においては、コンクリート中の空洞や亀裂中の水分子中の1H核(水素原子の原子核)を測定する。このように、NMRは水分子を非破壊で直接的に計測できることを最大の特長としており、弾性波や電気伝導度を用いた他の物理探査技術に比べて水の定量能力で抜きんでている。 図2aは、NMR表面スキャナーのセンサー部分である。円筒形の磁石の端面に「背中合わせ状態」のD型コイルが一対載せてある。このコイル表面から1.5 cm離れた空間がセンサーの感度領域であり、探査深度は1.5 cmということになる。このセンサーは、シグナルの増幅・変調・検波などを行う分光器本体に同軸ケーブルで接続されている。 計測手順としては、まず、センサーをコンクリートに押し当てて(図2b)、コイルから1H核の共鳴周波数(3.5MHz)のラジオ波パルスを照射する。次に、パルスの照射によって励起されたスピン系が熱平衡に回帰する過程(横緩和過程)を、同じコイルを用いて計測する。この横緩和波形データの振幅は、感度領域中の水分子の数に比例するので、コンクリートの空隙に潜む水の量に換算できる。
開発の進捗状況 現在、基本的なシステム構築は完了し、屋外での試運転(図2b)を開始したところである。また、水の定量能力を確認するための室内キャリブレーション実験も併行して行っている。一例として、コンクリート中の含水亀裂の開口幅の定量計測を目的としたキャリブレーション実験データを紹介する。2つのコンクリートブロックで模擬亀裂を作製して(図3a)、1H核の横緩和波形データを取得し、時間積算してシグナル強度を求めた(図3b)。図3bの一つのデータ点の取得に必要な時間は、5分であった。亀裂幅1.5 cmまではほぼ比例関係が成立しているので、この計測システムは開口幅1.5 cm以下の水を含む亀裂の定量計測ができると考えられる。
今後の展開 図3に示した実験により、探査深度が1.5 cmのプロトタイプながらも、コンクリート中の亀裂幅を定量的に計測できることが確認できた。今後は、トンネル等での実地試験を計画している。また、コンクリート表面には現れない深部の空洞または亀裂を検出するため、探査深度5 cm以上のNMR表面スキャナーも別途開発中である。 NMRは間隙水の量だけでなく、水分子の物理化学的な状態も定量計測できる。例えば、スピンの緩和時間は空隙サイズや固体表面との相互作用の情報をもっている。したがって、緩和時間データと併用することで、単なる亀裂や空洞検出以外にも以下の応用が期待できる。 (1)欠陥のない多孔質コンクリートの空隙サイズ・透水係数の非破壊測定 (2)コンクリートの養生過程のモニタリング 産総研では、これらの方面への研究展開も計画中であり、企業との共同研究を視野に入れながら、NMR物理探査技術の社会への提供を今後も進めていく予定である。 |
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