次世代のマルチメディアと関連して、五感を用いたマルチモーダル・インターフェイスが注目されている。特に、触力覚感覚を用いることで、従来型インターフェイスの操作性や情報の知覚・理解を向上させることが可能と考えられており、各種の技術訓練、遠隔操作、健康医療福祉機器などへの応用が期待されている。しかし、従来の技術は、アームなどを使ったものが主流で、ユーザがアームやワイヤなどで装置につながれているため、身体の動きが拘束されたり、複数の装置がお互いに干渉し合う、装置が大きく携帯に適さない、などの問題があった(図1-1)。
これに対して、携帯性を考えて腕に反力を支えるベースを設けた非接地型インターフェイスが開発された。しかし、これはベースがユーザ自身の身体内にあるが、物を押している感覚や外部から力を受けたという感覚に乏しいなどの問題点があった(図1-2)。従来型の力覚感覚インターフェイスのいずれのタイプもモバイルでの利用には適していない(図1-3)。
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図1 従来の力覚感覚提示インターフェイスと課題
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トルク感覚提示インターフェイス
これらの問題意識から、これまでの研究で、回転体の回転速度を制御して、角運動量の時間的な変化で任意の方向にトルクを提示するインターフェイス“ジャイロ キューブ”(GyroCube, 2001年)を開発した。この方法では、非接地・非身体内ベースでありながら、バーチャル物体から人に力が働いている外力感覚を表現できる。また、人間の感覚特性は非線形であり、与えた刺激の強度によって感度が良い刺激強度と鈍い刺激強度がある。この人間の非線形感覚特性を利用することで、モータの加減速を周期的に繰り返しながらも同一方向に回転力感覚を連続的に提示できる原理(ある種の錯覚)を考案し、連続的トルク感覚提示インターフェイスを開発した(2003年)。
回転力と並進力のハイブリット化
今回は、さらに、2つの偏心回転子からなる“ツイン偏心回転子方式”を用いることで、トルク感覚に加えて、並進力感覚も同時に連続的に提示できる力・トルク・ハイブリッド型力覚感覚提示インターフェイス“ジャイロ キューブ センサス”(GyroCubeSensuous)を実現した(図2)。2つの偏心回転子の回転方向・回転速度・位相関係を制御することで、モータ回転軸に対して任意の方向・強度・周波数の振動・回転力・並進力感覚を提示することが可能である。
人間の力覚感覚の非線形感覚特性を巧妙に利用することで、手のひらの上でジャイロ キューブ センサスが重くなったり、軽くなったり、ついには、浮き上がって感じられる力覚感覚のイリュージョンが実現された。この原理は、従来の非接地・非身体ベース型力覚感覚提示インターフェイスに比べ高感度・低消費電力を実現でき、偏心モータを3次元空間に配置するだけと機構も簡単であり、小型・軽量化が可能である。
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図2 力・トルク・ハイブリッド型力覚感覚提示インターフェイス “ジャイロ キューブ センサス”
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今後の展開
今回開発したジャイロ キューブ センサスは、医療・福祉分野やバーチャルリアリティの分野、IT産業において新たな展開を与えることが可能な技術である(図3)。例えば、引っ張られる感覚で進行すべき方向に誘導するヒューマンナビゲーションシステムや、手術シミュレータ・遠隔手術の実現のために有効な技術の一つである。特に、触力覚感覚が重要な情報獲得手段になっている視覚障害者に対する支援として、大きな貢献が期待される。
また、ゲーム機器への応用も考えられる。たとえば釣りゲームでは、ジャイロ キューブ センサスを用いて釣竿型コントローラの動きを制御すれば、回転力・並進力・振動感覚によって魚の種類に固有の動きまで表現することが可能になる。
この他、パソコン用3Dマウス、ゲーム機、バーチャルリアリティなどのインターフェイスに応用することができる。今後は、さらに小型・軽量化を図り、インターフェイス機器メーカーとの共同研究を推進することで製品化につなげたい。
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図3 GyroCube テクノロジーの応用
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中村 則雄

