環境に埋め込まれたセンサを用いて、人間の行動を観察し、人間中心のサービスを提供する知的生活空間を研究することが世界的に活発になっている。このような知的空間を構築するには、人間行動観察技術が不可欠である。家庭、工場、病院、オフィスといった人間が実際に行動するにおいて適切な精度で、かつ、安定な計測ができること、さらに、観察システムを、安価に、手早く構築できることが重要となる。
ここでは、これまでデジタルヒューマン研究センターで開発してきた人間行動観察のための日常環境センサ化技術として、超音波3次元タグについて紹介する。
日常環境における人間行動観察のための日常環境センサ化技術
メートルオーダの検出精度では、人がどの部屋にいるのかぐらいしか観察できないが、センチメートルオーダで人間の行動が観察できれば、リモコンを使っているとか、ベッドから降りるといった日常動作が記述できる。一方、ミリメートルオーダでこれらの行動を確実に観察しようとするときわめて高コストなシステムが必要になる。
そこで当研究センターでは、人間行動をセンチメートルオーダで観察して解析する技術として、超音波3次元タグシステムを開発してきた。このシステムは、対象物や人に取り付けられた超音波3次元タグ(小型超音波発信器)から発せられた超音波を、天井や壁に設置した複数の受信器で計測し、到達時間の差から、超音波タグの3次元の位置を計測するシステムである。ミリメートルオーダで位置が計測できる市販システムの1/100〜1/10程度の価格である。図1に、開発した超音波3次元タグと、このタグを用いた対象物の軌跡の計測例を示す。
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図1 超音波3次元タグと計測例
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手早いセットアップが可能なポータブル超音波3次元タグ
家庭やオフィスといった現場での人の行動を観察しようとする場合、手早くセットアップが可能なシステムが必要となる。セットアップには、受信器の正確な位置決めが必要である。この研究では、図2に示すような、ポータブル超音波タグシステムを開発した。3個以上の発信器が取り付けられたこの装置を適当に動かすだけで受信器の位置決めを行える手法を開発した。
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図 2 ポータブル超音波タグシステム
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設置コストを低減する全方位超音波位置センサ
いかに超音波センサが安くても、その設置回数が多ければ、設置の際の人件費により、システムの総コストを上げることにつながる。設置回数を減少させるため、この研究では、図3に示すような全方位超音波位置センサを開発した。これは多面体の頂点に受信器を配置して、全方位を計測可能なセンサである。5m×5mの部屋にこの全方位超音波位置センサを取り付けると、図4のような配置となる。これまでの超音波受信器では36個必要であったが、この全方位超音波位置センサでは3個となり、受信器を取り付ける手間が大幅に軽減できる。
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図 3 全方位型超音波位置センサ
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図 4 全方位型超音波位置センサの計測可能範囲
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おわりに
当研究センターでは、次の目標として、超音波3次元タグによる人間観察技術を応用して、人ができないことをさせたり、不得意なことを簡単にできるようにさせたり、逆に、やってはいけない行動を起こしにくくする環境 “Enabling Environment”の構築を始めている。少子高齢化社会を支える見守り支援環境や、国際社会を支えるスキル向上支援環境など、応用の幅は広い。
当研究センターでは、これまで開発してきた超音波3次元タグと関連技術を、古河産機システムズ(株)との共同研究によって製品化し、知的空間研究のツールとして、また、人間観察に基づくアプリケーションの要素技術として外部への提供を始めている。

西田 佳史


