日本国外への周波数国家標準の遠隔校正実験 |
[PDF:802.7KB] | ||
周波数校正の利便性向上に向けて |
|||
|
産総研は、横河電機(株)との共同研究で、茨城県つくば市と中国江蘇省蘇州の横河電機(蘇州)にある社内標準器との間で周波数遠隔校正実験に成功し、国外に設置された機器を十分な精度で校正できることを実証した。これにより、国外の日本企業に対して校正サービスを迅速化し、経費や手間を大幅に軽減できる見通しを得ることができた。
|
|
|||
|
National Metrology Institute of Japan (NMIJ) of AIST and Yokogawa Electric Corporation have successfully performed a remote frequency calibration experiment between NMIJ in Tsukuba Japan and Yokogawa Electric China in Suzhou, China.
The experiment shows that a remote frequency calibration system will be established in near future. The system will provide quick calibration services to Japanese & other companies in foreign countries. |
周波数遠隔校正の必要性産総研では、4年前からNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託研究により計測標準の遠隔校正技術(e-traceプロジェクト)の研究開発を各量で進めている。 時間周波数の分野では、従来、持ち込み校正(校正依頼者の基準発振器をつくばに移送してもらい、産総研の周波数国家標準を用いて測定、測定後に基準発振器を返送する)で周波数校正サービスを実施している。このため、校正依頼者側の基準発振器は、校正を行っている間は校正依頼者の手元からなくなるため事業に支障を来す。また校正は年1回が基本であり、基準発振器自体に起因する不確かさが経時変化により増大していくといった理由により、校正依頼者から遠隔校正をしてほしいという要請が非常に多く、e-traceプロジェクトでの遠隔校正の実証・実用化が期待されていた。 GPS Common-view方式による周波数遠隔校正法GPS衛星の開発初期より、GPS衛星を仲介した時刻比較は、各国の時間周波数研究機関の間で、国際原子時(TAI)構築のための時刻比較の主要技術として用いられている方式である。 これは、図1のように、座標がわかっている2地点で、同一のGPS衛星を同時に各地点の基準時計を基に受信し、各々の地点でGPS時刻と各基準時計との時刻差を測定する。そして、その測定結果の差((GPS time−Clock A)−(GPS time−Clock B)= Clock B−Clock A)から両地点の基準時計間の時刻差が求められるという原理に基づく方式である。周波数差を求めるためには、一定時間後に同様の測定を行い、時刻差の変化分を経過時間で除すればよい。すなわち、公称周波数10MHzの基準時計の比較で、1日後の時刻差の変化が1µsであったとすると、約1.1×10-11の周波数偏差(10MHz換算で0.11mHzの周波数差)となる。
産総研では、図2のようなGPS Common-view法に基づいて産総研と校正依頼者サイトの間で周波数の遠隔校正を行うシステムを開発中である。図のように、産総研と校正依頼者サイトの双方でGPS時刻比較用受信機による測定を行い、校正依頼者サイトで得たデータは、インターネット(SMTPに基づき、通常1日に2回産総研へデータを送付)で転送され、産総研側では、当所の周波数国家標準を基準として受信した結果との差を計測し、サーバ計算機でデータの蓄積と処理を行う。 周波数校正の結果としては、毎日の時刻比較結果の変化から、日々の周波数偏差(国家標準と校正依頼者の基準発振器の周波数差)とその不確かさが報告される。
国外への周波数遠隔校正産総研と横河電機技術開発本部計測標準センターは共同研究の一環として、2005年4月から横河電機(株)の中国江蘇省蘇州の社内標準器との間で周波数遠隔校正の実験を行った。まず遠隔校正システムを設置したが、アンテナ座標の決定を行った翌日には、校正結果の暫定値が得られ、遠隔校正の利便性が示された。特に、海外の日本企業の標準器は、従来国内へ返送して校正していたため、通関や輸送に要する時間など3ヶ月程度の時間が必要であったが、これで期間の飛躍的短縮と作業の簡便化を実現できる見通しがついた。 まとめと今後の予定GPS Common-view法は、国際時刻比較では20年以上の実績があり、また、当所で採用したデータ伝送方法も非常にシンプルなもので、使いやすく信頼性の高いものを目標に開発してきたものである。しかし、各校正依頼者サイトにおけるネットワークのセキュリティ対応は、統一的なものが無く、今回の蘇州との実験においても同事業所固有の課題がいくつかあったが、今後、より簡便なものにするための基礎資料や開発指針を得ることができた。 最後に、今回の蘇州実験に際して共同研究を行い、実験の遂行にご尽力いただいた横河電機(株)の関係者各位、e-traceプロジェクト推進に関しては、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の関係者各位、ならびに遠隔校正の認定に関してご尽力をいただいている独立行政法人製品評価技術基盤機構の関係者各位をはじめとするお世話になった皆様に感謝したい。 |
| 関連情報: | |
|
|