磁気ヘッドに最適な高性能TMR素子を開発 |
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超高密度ハードディスク用磁気ヘッドに目処 |
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酸化マグネシウムをトンネル障壁に用いたトンネル磁気抵抗(TMR) 素子を開発した。このTMR素子は、低い素子抵抗とともに室温で140%という巨大な磁気抵抗比を持つもので、次世代の超高密度ハードディスク用の磁気ヘッドへの応用が期待される。
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We have developed a high-performance magnetic tunnel junction (MTJ) device with magnesium-oxide as a tunneling barrier. The MTJ device shows low junction resistance and huge magnetoresistance ratio up to 140% at room temperature. It is expected that the MTJ device is applied to highly sensitive read head for ultrahigh-density hard disk drive (HDD) of the next generation.
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磁気ヘッドの発達と現状1988年に、磁性金属多層膜の巨大磁気抵抗(GMR)効果という物理現象が発見され、これを利用したハードディスク(HDD)の読み出し用磁気ヘッド(GMRヘッド:図1)が90年代後半に製品化された。GMRヘッドは、それ以前の磁気ヘッドに比べて非常に出力性能(磁気抵抗比)が高かったため、ハードディスクの記録密度を飛躍的に上昇させ、低価格化を可能とした。これまでに1平方インチ当たり100ギガビットという高記録密度のハードディスクが実現されている。現在、ハードディスクの用途はパソコンやサーバーだけでなく、ビデオレコーダーやカーナビ、デジカメ、携帯電話などへも広がっている。
しかし、今後のハードディスクの発展に目を向けたとき、現行GMRヘッドの磁気抵抗比が15 %程度にとどまっていることから、これ以上の高密度記録に対応するのは困難であると考えられてきた。より高密度なハードディスクを実現するには、より高性能な次世代磁気ヘッドの開発が不可欠である。次世代の磁気ヘッドとしては、トンネル磁気抵抗(TMR)素子(図2)を用いた「TMRヘッド」が最有力候補の一つであるが、以下に述べるような問題があった。
次世代HDDヘッドの条件次世代磁気ヘッドに要求される重要な条件は、記録ビットからの弱い漏れ磁場を検出するための磁気抵抗比の増大と、データ転送速度の高速化と低ノイズ化のための素子抵抗の低減の二つであり、これらの条件を両立させる技術の開発が求められている(図3)。前者に関しては、少なくとも室温で20 %以上、理想的には100 %以上の磁気抵抗比が望まれる。後者に関しては、1µm2当たり0.1〜4 Ωの範囲にあることが必須である。トンネル障壁に酸化アルミニウムなどを用いた従来型のTMR素子は、MRAM用に開発された高抵抗の素子では70 %の磁気抵抗比が得られているが、後者の条件を満たす低抵抗のTMR素子では、磁気抵抗比が20 %程度まで下がってしまうことが問題となっていた(図3)。 0.1〜4Ω・µm2の条件を満たす低抵抗のTMR素子で、かつ磁気抵抗比が100 %以上の素子の開発が強く求められていた。
条件を満たすTMR素子の開発昨年、産総研はアネルバ株式会社との共同研究により、酸化マグネシウム(MgO)をトンネル障壁に用いた新型のTMR素子を開発し、室温で200 %を超える巨大な磁気抵抗比を実現した(図3)。このときのTMR素子の抵抗値は1µm2当たり約500 Ωで、MRAMに応用するには最適であったが、磁気ヘッドに応用するには高すぎた。 今回われわれは、磁気ヘッドの製造に標準的に用いられているスパッタ装置を用いて、8インチ径の熱酸化シリコン基板の上にMgOトンネル障壁薄膜を室温スパッタ成膜により作製した。これは標準的な量産プロセスに準拠したものである。素子の抵抗値を1µm2当たり4 Ω以下まで下げるために、MgOトンネル障壁の厚さを1ナノメートル(nm)以下まで薄くした。このような非常に薄いトンネル障壁を用いて巨大な磁気抵抗比を実現するために、今回われわれは新たに「二段階成膜法」という手法を用いた。下部電極(CoFeB合金)の上にまず金属マグネシウムを薄く積層し、次にMgO層を積層した。その結果、非常に薄い領域でも高品質のMgOトンネル障壁が作製された。このようにして作製した薄膜を、電子線リソグラフィーなどの微細加工法を用いて加工し、約100 nm×200 nmという微小サイズのTMR素子を作製した。図4は、素子の断面の電子顕微鏡写真である。この結果、1µm2当たり約2 Ωという低い素子抵抗と、室温で140 %という巨大な磁気抵抗比が同時に達成された。これは、従来型の低抵抗TMR素子に比べて7倍の出力性能に相当し、超高密度ハードディスク用の磁気ヘッドとしては十分な性能である(図3)。
実用化に向けて今回の成果により、1インチ当たり200ギガビット以上の高記録密度を持つハードディスクの実現がより確実なものとなった。今後は、産総研とアネルバ株式会社の共同研究体制により、さらなる低抵抗化と高い磁気抵抗比を探求するとともに、磁気ヘッドに要求されるその他の特性(高透磁率、耐久性など)の改善を行う予定である。 |
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